染色家の金井志人さんは、大島紬の染色技法「泥染め」など、自然素材を使った染色に取り組んでいます。
(染色家 金井志人さん)「実験の繰り返しです。天然染色って、意外と化け学なんですよね。どの植物がこれに反応するのか」
奄美大島龍郷町の戸口集落にある泥染の工房「金井工芸」。金井さんは、この工房の2代目です。高校卒業後、音楽の勉強をするために一度は島を出ましたが、25歳の時にUターンしました。
(金井さん)「一度離れてみて(故郷の)良さがわかるのはほんとにあって。俯瞰的に奄美を見ると、より面白く地元が思える」
色を作るということ
(金井さん)「実際やってみて思ったのが、ちょっと音を作る行為に近い部分があるなあと。色も買ってくるのではなくて、採りに行く、山に。自然から採るという点では、フィールドレコーディングに近いのかな」
泥染めの原料となるのは、シャリンバイという植物です。
(金井さん)「島の山から採取してきて、チップ状に砕いて、染料に煮出していく。これを寝かせて1週間くらいかけて染料を作って、初めて染めの作業が始まる」
大島紬といえば、独特の黒色が特徴です。しかし、深い黒は、すぐに作り出せる色ではないと金井さんは話します。
(金井さん)「黒は一色ではない。色んな色が重なって、最終的な色になる。最初はこういった色から始まってく、赤から作られる黒っていうことになる」
そして、次の工程が泥染めです。
(金井さん)「シャリンバイの赤を泥田の鉄分と化学反応させると黒っぽくなる。それを80回や、100回染め重ねて、あの黒を作り出してる」
泥染めの魅力は…。
(金井さん)「五大要素をうまく使っているものだと思う。火でシャリンバイを煮出す、木や土を使う、風で乾かすなど、自然のものと付き合っていくことを思い知らされる。」
(金井さん) 「それを築き上げてきた先人の知恵は本当にすごい。(自然と)どうやって共存していくかという形が技術として残ってきた気がする。自分らが染めているっていう感覚よりかも、島に染めをさせてもらってる感覚の方がすごく強い」
金井さんは、伝統を受け継ぎながら、ファッションブランドとのコラボレーションや、紬以外の商品開発なども積極的に行っています。
(金井さん)「着物好きであれば大島紬でたどり着く部分ではあるが、普通にたどり着かない部分もあるので入口を広く、しっかりした土台、根っこがあるので、どれだけ崩しても崩れないと思う」
最近は、布以外のものを染めることにも挑戦しています。
(金井さん)「サンゴの死骸を染めてます。元々、大島紬の泥染めの工程で、サンゴを石灰代わりに使っていたという経緯があり、そういった部分もちょっとわかるようにサンゴを染めて。面白いです、地元がこんな所で良かったなあと。地元でやれる、作れるということが。これからもずっと、染めに携わっていけたらなあと思ってます」
金井さんの作品の展示会が、2021年12月11日から12月19日まで、鹿児島市の黎明館で展示されます。入場は無料です。
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