(養老孟司さん)「金色しているでしょう。これ乾くと消える。水に浸けると元に戻る、ピカピカに。結構水で色が変わる虫はある。」
養老孟司さん(83)は神奈川県出身の解剖学者で、東京大学を退職した後も執筆活動を続けています。
仕事と別にライフワークとして続けているのが、昆虫の採集と研究です。
先月も奄美大島で、少年のように目を輝かせながら昆虫を探していました。
(養老孟司さん)「カメムシは集めてないが、なかなかいい眺め。」
奄美の国立公園の一部は昆虫など生き物を取ることができない地域もあります。
この日はガイドの案内のもと許可されたエリアで昆虫採集をした養老さん。
およそ60年前に奄美を初めて訪れて以来、昆虫採集のために5~6回は訪れているといいます。
(養老孟司さん)「(初めて訪れた)当時の方が人が立ち入っていじっている場所が広かった。そういう所の方が虫取りはやりやすい。今はもう森は森で画然と区別されて、どっちもつかないような里山みたいな所がなくなってきた」
養老さんは、都市型の生活だけをしていては人間の頭と体にずれが生じるため、自然と接することが大切だと話します。
(養老孟司さん)「今回も加計呂麻島に行って小学生と話をした。どうして奄美に来たか、親御さんに聞いたらアトピー(治療)で。体は頭で考えても分からないことがある。特に子どもの場合は、元来が自然の中から出てきたものだから、ビルの中で遊んでいるより田んぼや畑のある外で遊んでいた方がいい。」
このインタビュー後に正式決定した奄美・沖縄の世界自然遺産登録について、養老さんは多くの人が何を遺産として後世に残すべきなのか、改めて考えるきっかけになると話します。
(養老孟司さん)「ニューヨーク・ロンドン・パリ・東京みたいな所が、人類が生きる最先端みたいに思ってきたとすればそうではない。人間の方がついていけなくなっている。何世代か、子ども・孫・その先ぐらいになるかと思うが、その頃になって何が大切か未来の人は考えるだろう。遺産はそういうもの。何を残すか。」
そして、コロナ禍も重なる中で、幸せとは何なのか?考え続けてほしいと話します。
(養老孟司さん)「よく経済一辺倒と言っているが、その根本にあるのは何かということをやっとコロナのおかげもあって皆さんが考え出した気がする。人生とは何か、幸せとは何かとか、具体的にどう暮らせばいいかとかを改めて考えさせられるような時代になった。考える時に答えを要求してはいけない。人生の問題には答えがない方が当たり前で、ある方が変。自然と直接、接して生きていると簡単に答えが出ないとすぐ分かる。」
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