環境省奄美群島国立公園管理事務所所長・阿部 愼太郎さんにお話を伺います
奄美沖縄が世界自然遺産の候補地として選定された理由、それは日本最大級の亜熱帯照葉樹林と、独自の進化を遂げた固有種や絶滅危惧種の多様な生態系が見られる重要な地域だからです。阿部さんは奄美側の保護対策の先頭に立っています。
阿部:仕事は、奄美群島の国立公園とか自然遺産推薦地域の管理です。
このエリアには、外来種対策、マングース、イヌ、ネコを始めとして、いろんな外来種が定着しています。また盗掘、昆虫とか植物を黙って島から持ち出して売買している人たちがおり、その対策をどうするのか。さらに世界遺産になれば、観光客が多く来るだろうけれども、それで自然がきちんと調和が保てるのか。どうしてったらいい改善できるだろうかというようなことをやっています。
阿部さんはアマミノクロウサギを守るためにマングースの駆除にいち早く取り組んできました。
阿部:奄美大島にマングースが連れてこられたのが1979年です。
私は1988年に大学を卒業して初めて奄美大島に来ました。奄美大島で就職をして、仕事の傍ら地元の人たちと協力をして、マングースの調査を始めたのが89年ぐらいです。会社には11年勤務しましたが、マングース対策を何とかしないといけないということと、環境省が人を募集しているということが重なり、転職をしたのが、1999年です。2001年から2007年まで6年余りを奄美野生生物保護センターで勤務をしました。
2005年の時には、外来生物法が出来て、マングースを控除していくという事で、奄美マングースバスターズを立ち上げました。やがて20年になろうとしていますけれども、ここ3年ぐらいはマングースの捕獲がない状態が続いていて、根絶も近いと思っています。
私は2007年までは奄美にいましたけれども、その後は沖縄で7年、山梨で3年、岡山で3年勤務して、去年の7月に戻ってきました。
環境省奄美群島国立公園管理事務所所長として、世界自然遺産登録に向けて知っておいてほしいことがありますか?
阿部:今、アマミノクロウサギの交通事故がとても増えていたりとか、イヌ・ネコなどのペットが山に行ってウサギを食べてしまったりするような事故が頻発しています。交通事故の対策は、アマミノクロサギは夜行性なので、夜の運転はウサギが出てくるかもしれないと思って、気をつけて運転していただければ。ただ、昨年は過去最高を記録してしまいました。島に住んでいる、ひとりひとりが夜の運転は気を付けていただくことが大切です。
それからペットの飼い方一つちょっと改めて、考えていただけるようになるといいなと思っています。
この時代を生きる上で「豊かさ」というのは何だと感じていらっしゃいますか。
仕事は結構バタバタしていたりして過ぎてしまうんですけれども、本当に山とか海に目をやるとゆっくりと時間が流れていますし、そんなに急ぐ必要はないよ、と言ってくれているようなふうに感じたりもします。
本当に奄美のいろんな人に優しくされていて、奄美の人もとても好きです。そして、山や海の動物植物。夜になると、クロウサギをはじめ色んな動物に会いに山に入ってみたりとか、休みの日には、シュノーケリングをしてみたりとか、あちこち山や海へ行っています。もう、本当に色んな生き物との出会いがワクワクもしますし、リラックスにもなりますよね。皆さんにもぜひこの奄美の素晴らしさを感じてほしいと思っています。
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