2021年にかける!(2) 一山麻緒選手(マラソン)
コロナ禍での東京オリンピック開催に向けては様々な課題がありますが、出場を目指すアスリートは、大会があると信じて練習に取り組んでいます。
そんな「2021年」にかけるアスリートに迫るシリーズです。
第2回:一山麻緒選手(女子マラソン・東京オリンピック日本代表内定)
東京五輪・女子マラソン日本代表に内定している出水市出身の一山麻緒選手(23/ワコール所属)は2021年「勝負の1年」のスタートを徳之島で迎えました。「高速化」しているマラソンに対応するため、世界と戦えるスピードを身につける事をテーマに練習に臨んでいます。
取材させて頂いたこの日は、立っているのも大変なほど冷たい強風が吹くなかでの練習。
設定タイムを目指しながら35キロを走り、途中では「給水ポイント」を想定して、ボトルを取る練習も繰り返していました。
向かい風にも耐えながら走り続けた一山選手ですが、徐々にきつくなる後半、23キロ付近で停まってしまいます。取材スタッフも心配していると…
異変の原因は…足の爪がはがれかけていたこと。
それでも、処置をしてもらい走り出した一山選手。
この姿を見た所属チーム・ワコールの永山忠幸監督は、取材カメラに向かって一言。
「やっぱりオリンピック選手だ。すごい。」
それもそのはず。アクシデントの後も大きくタイムを落とすことなく、強風のなかで練習をやり切った一山選手。しかし、その表情は…悔しそうでした。
永山監督は「いい練習はできましたが、タイム設定に届かなかったので、本人も悔しかったんだと思います。まだまだ自分の中でも目標とするところを見失ってないですし、確実に上を目指してくれているなと思った。」と話して下さいました。
練習後、一山選手にこの日の練習を振り返ってもらうと…
「練習内容もハードなんですけど、プラス風なので今日は…。負荷は高かったと思います。さすがに、きついな…休みたいなと思う時もありますよ。マラソン後の「お休み」を楽しみにしてます。」と、
リラックスした表情。
ただ、練習の「中身」の話になると…。
「きょうはあまりペースが上がり切らなかった…もう少し早く走りたかったのもあります。目標とするタイムを追うことで、自分の理想とする走りに近づけると思う。1秒でも速いほうがいいので、タイムへのこだわりはいつも持っています。」と練習での悔しさを隠しながら真剣な表情で語り、直近の目標であるマラソン女子日本記録更新ヘのこだわりも見せました。
そんな一山選手にとって、2020年は大きく変化した1年でした。
3月には名古屋ウィメンズマラソンで日本歴代4位・国内最高記録となる2時間20分29秒で優勝し、東京五輪の代表に内定。勢いそのままに夏を迎える予定が、新型コロナの影響を受けました。
「心構えはしていた」と話す一山選手も…。
「いままで、当たり前に使えていた競技場とかで練習できなくなったり、走ることを良く思わない方もいらっしゃったりしたので、練習はしずらいところもあった。でも、アスリートとして練習は欠かせなかったので、なるべく人がいないところで…河川敷が多かったですが、走っていました。
東京五輪が1年間伸びたことは、トレーニング期間がしっかり設けられて強くなれるチャンスだなと…自分にとってプラスに考えました。」
大変な出来事も前向きにとらえて、日々練習に取り組む一山選手に今年の目標を記してもらいました。
その理由を聞くと…
「たくさん応援して下さる方がいるので、堂々とした走りをお見せして、元気を与えられたらと思っています。」と笑顔で話して下さいました。
実業団ワコールに所属して5年目。
語る目標がさらに高くなり、その分、練習やレースでの悔しさが生まれているように感じる一山選手。夢に見ていたオリンピックの舞台に向けて、さらに成長する姿が楽しみです。
【取材報告:松木圭介】