サッカーが教えてくれたこと…。「もうひとつのW杯」取材日記(1)

(予選リーグ最終戦となったロシア戦の先発メンバー(C)Koichi Saito/JFFID)

8月5日からスウェーデンの中央部、鹿児島からは直線距離で約8400km離れたカールスタッド市を中心に行われている、INASサッカー世界選手権、通称「もうひとつのW杯」の取材の為にスウェーデン支店に居ます。
陽射しは強いものの鹿児島と比べて空気が冷たく、「北欧の地に来たのだな…」と肌で感じながら取材活動をスタート。今回は「日記形式」で記録することにしました。
知的障がい者サッカー日本代表の様子を少しでも感じて頂ければと思います。

-店主・松木圭介

Day1 8月13日(月) 晴れ

AM8:00 朝の散歩

選手たちの朝の日課に同行。
朝日のまぶしさ、陽射しの強さは感じるが、空気が冷たく「北」にいるんだというのを感じた。
選手たちは、7月下旬の国内最終合宿のあと、直接スウェーデンに入っているため、既に2週間の滞在になっているが、大きな怪我・病気もなく順調とのこと。姶良市役所職員で日本代表監督の西眞一さんをはじめ、スタッフの皆さんの選手への目配り・気配りがチームを支えているのを改めて感じる。
チーム最大の目標「ファイナリスト」の夢への道は途絶えてしまった日本代表だが、新たな目標に向けてスタートしていた。

AM10:30 公式練習

選手たちが滞在している場所からバスで15分ほどの場所にある地元サッカーチームのグラウンドでの公式練習。入り口のポールにスウェーデンの国旗と日の丸が掲げられており、国と日本代表というものを改めて意識した。
バスの中で、西監督が「ここですよ」と練習場を教えてくださった瞬間の目…、スイッチが入ったその目は「キング西」さんを改めて感じた瞬間だった。
体起こしの練習から始まり、順位決定戦に向けて日本代表が出来ること、すべきことをイメージしての練習が続いた。
途中、日本への生中継(…あえて言います、国際中継(笑))。
ポイントは、障害のあるなしに関わらず、目標を持って取り組むことの大切さ。そして、それをサポートする環境の必要性・・・選手たちの表情を見て、改めて感じた。
感傷的過ぎるかもしれないが、「勝ち負けだけではないんだ」…そんなことを思った。

PM4:00 夕方練習

2日後の15日に迫った順位決定トーナメント1回戦に向けて、試合開始時間と同じ時刻に体を動かす日本代表。宿舎の周りの河畔の遊歩道などでランニング。それぞれのペースで心拍を上げながら、ダッシュ区間も交ぜる「クーパーランニング」。
鹿児島県出身の原良田龍彦選手が、絞られていく先頭メンバーに残り、最後はトップ争いも。
いい表情をしていた、スイッチが入っていた、きっと結果が出るはずだよ…と声を掛けたくなったが、飲み込んだ。
取材をしていると、選手の「こういう」瞬間に立ち会えるのが嬉しい。

(選手達がランニングする宿舎のそばの風景)

PM8:15 ミーティング

毎晩行われている代表ミーティング。この日は、次の対戦相手となるスウェーデンのVTRを見た後、FW・DFに分かれて「チーム分析」。それぞれの視点からの分析、互いに声を掛け合う姿にスタッフ陣も頷いていた。
コミュニケーションを苦手とする選手もいる知的障がい者サッカーの世界で、この「ディスカッション形式」でのミーティングは難しくないのか?西監督に聞くと「ピッチ内で、自分たちで解決できるのが一番ですからね。始めから出来たわけではない…、合宿などを通してここまで出来るようになったと思いますよ」と、優しい目に。サッカーを通して「成長」する選手たとの姿があった。
ミーティング後、チームメンバーがそれぞれ部屋を離れる中、最後までGKと確認を続けていた、鹿児島県代表チームでも活躍する谷口拓也選手…「勝ちたい」、その思いも試合に届くはず。

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