屋久島で郷土菓子を作って約60年 83歳夫婦
屋久島の北側・一湊集落にある創業59年の菓子店、平海製菓
屋久島の北側・一湊集落にある創業59年の菓子店、平海製菓。寺田平海さん(83)と同い年のユミさんが夫婦で営んでいます。お店に並ぶ和菓子やパンなどはすべて手作りです。
中でも人気なのが、一湊集落に伝わる郷土菓子の「よもぎかん」。ヨモギと砂糖、水、上新粉などを混ぜて2時間以上蒸して作られます。もっちりとした食感が特徴です。
かつては一湊集落の各家庭で作られていた『よもぎかん』ですが、集落の高齢化とともに作り手も減少。平海製菓では40年ほど前から販売を始め、今では『よもぎかん』の味を守る集落唯一の菓子店です。
(平海さん)「今はもう仕事は趣味のようなもんです。こだわりは、人が見て、おいしいなと思うような」
(ユミさん)「(40年前は)自分の家で作るから、味が違うでしょ。いろいろ試行錯誤して考えて、やっとこれにたどり着いたんですよ。(常連のお客さんには)ありがたいです。ずっとね、来てくれて」
(平海さん)「うれしいですよ」
(ユミさん)「よもぎかんをしてよかったなと思いますよね」
夫婦で菓子店を営む
種子島の南種子町出身の平海さんは、中学卒業と同時に屋久島に渡り、一湊集落の親戚の菓子店で働き始めました。その後、一湊集落出身のユミさんと出会い、1962年に結婚。結婚を機に、平海さんは独立し、夫婦で店を開きました。
当時の一湊集落はトビウオ漁で栄え、人口も現在の5倍の2700人ほどがいて、賑わっていたといいます。寺田さん夫婦が作った和菓子は集落でも評判で、飛ぶように売れたと当時を振り返ります。
(ユミさん)「昔売れた時には、寝ずに作らないと間に合わないんですよ。空っぽになったらお客さんに悪いからね。売るのも楽しみだし、お客さんが来てくれるのも楽しみだし」
ふるさとの味を守る平海製菓、元気の秘訣
今でも朝食のパンを求め、買いに来る馴染み客のために、毎朝、6時半に店を開けています。
仕事が趣味と話す平海さん、材料のヨモギやイモなども自らの手で栽培しています。
(ユミさん)「(平海さんは)よく働く人。一言で言ったら。仕事したらすぐ畑に行って、それがまた楽しみみたいで、趣味といったら何にもないんですよ」
(平海さん)「(ユミさんは)最高の人です。自分はお菓子を作るだけで事務的なことは全然しないんです」
二人三脚でお互いを支え続けてきた寺田さん夫婦、元気の秘訣は。
(ユミさん)「考えることと、体を動かすことだと思います。私きょう何回座ったかなと、ご飯を食べる時しか座ってないんですよ。自分は83歳と思っていない。75歳ぐらいだと思っていないと、しんどいから」
(平海さん)「(元気の秘訣は)毎日働くことですかね。それと焼酎を一杯、毎晩飲んでいます」
ふるさとの味を守る平海製菓。寺田さん夫婦は、きょうもお客さんの笑顔のために厨房に立ちます。