雨期防災③ 「土砂災害への備え」

ニューズナウではシリーズで「雨期の防災」についてお伝えします。
シリーズ3回目は「土砂災害への備え」についてです。

火山性の地質が広がる鹿児島は全国でも土砂災害の多い地域です。
いざというときに命を守るためにはどのような備えが必要でしょうか。池田記者の報告です。


(記者)「崩れた山の斜面は土がむき出しになっています」

去年7月7日、鹿児島市の古里町で住宅の裏山が崩れこの家に住む、80代の夫婦が命を落としました。

(岩森正さん)
「ポキッ、ポキッ、ポキッって3回聞こえたもんですから。あわてて2階の窓から見てですね」

がけ崩れが起きたのは朝から雨が降っていた日の夕方。
現場の近くに住む町内会長の岩森正さんは土砂で家が押しつぶされる音で異変に気づいたそうです。

(岩森正さん)
「今まで私も60年間、住んでいるが、今まで一度もない」

 

住民のだれも経験したことがなかったというこのがけ崩れがきっかけとなり、岩森さんは住民の防災への意識が高まったと話します。

避難に時間がかかる高齢者の家が書かれた地図を参考にし、がけ崩れが起きた去年の7月以降は大雨と台風で7回、避難を呼びかけました。

岩森正さん)
「避難をお願いしますと言うと、皆さん協力してもらっている。全員、この通りの人は避難させてもらっている。皆さん、全然抵抗がなくてやってもらっているから」

鹿児島市が指定している古里町の避難所はがけ崩れが起きた住宅からおよそ500メートル。歩いて10分ほどの距離にあります。

いざというときに命を守るため、落ち着いて行動できるか。
県内の土砂災害に詳しい鹿児島大学の地頭薗隆教授は市町村が住民に配る防災マップを使い、避難所までの道を確認しておくことが大切だと話します。

(地頭薗隆教授)
「天気がいいときに実際、こういう防災マップを見ながら自分たちで歩いてどこが歩きやすいのか。そういう訓練をしておくことも大事」

(池田記者)「お年寄りだと、あそこの避難所まではなかなか…負担が大きいですかね」
(地頭薗教授)「歩いていくのは大変だから早めに避難していただきたいというのはそういうこと。崩れる前に避難していただきたい」

古里町で起きたがけ崩れはがけの表面の土壌が崩れ落ちる「表層崩壊」が原因といわれ、大きな木が生えている場所ほど大雨が降ると崩れやすくなると指摘します。

(地頭薗隆教授)
「溶岩が風化したり、あるいは軽石、火山灰が乗ってやわらかいものが出る。そして、そこに草が生えて木が生えて木が大きくなるにつれて木が根っこを張るので、ますます表層を柔らかくしていく。雨水が集中してそこの水圧が上がって、それに斜面が耐え切れなくなるとすべり台をすべるように、ざーっとすべる。これが典型的な表層崩壊と呼ばれるもの」

住民2人が犠牲になったがけ崩れの現場から避難所に向かう途中では、同じ日にがけ崩れが発生し、他の住民は別の場所に避難しました。

(地頭薗隆教授)
「そこが、同じように7月7日に崩壊した」

(地頭薗隆教授)
「もし避難所に行けないときにはより安全な場所に避難しようということを集落で考えておかないといけない。防災力をつけるというのは考える力をつけてほしい。そういうのをいつも集落で話し合っておけば、自然に考える」

毎年のように繰り返される鹿児島の土砂災害。


県は急な斜面や地すべりなど土砂災害が起こる可能性がある1万9000か所を「土砂災害警戒区域」に指定しています。

こちらは県のホームページです。
危険な場所だけでなく、土砂災害が起きたとき、被害を受けるおそれのある範囲が示されており、自分の住む地域が危険な場所にあるかどうかを確認することができます。

◇鹿児島県/土砂災害警戒区域等マップ

(県砂防課五十嵐祥二課長)
「大雨の際はさまざまな防災情報が流れる。大雨警報だとか、土砂災害警戒情報と。段階を上がって危険度が上がっていくので、そういった情報が出た際は特に土砂災害の危険箇所に住んでいる方は早めの避難ということで自分の命を守っていただければと思う」

ただ、土砂災害を防ぐために必要な砂防ダムやのり面の保護などの整備率は36%にとどまっており、被害を防ぐためには
ソフト面での対策が鍵を握ります。

(県砂防課五十嵐祥二課長)
「行政のほうからいろいろな情報は出しているし、出ている。ぜひ皆さまがたにはその防災情報を我がこととして受け止めてもらい、自分の命は自分で守るということを重きにおいてもらい、活用してもらいたい」

これから本格的な雨のシーズンを迎える中、いざというときにどう備えるか。
日ごろから一人ひとりが防災に関心を持ち、早め早めの行動につなげる心構えが大切です。

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