【シリーズ雨期防災②】喜界島 豪雨被害 現状と教訓
雨期の防災を考えるシリーズです。きょうは、去年9月、豪雨に見舞われた喜界島について、お伝えします。
およそ2時間半の間に記録的短時間大雨情報が2度発表され住宅や道路などに被害が相次いだ喜界島。
現状と教訓など有島記者の報告です。
去年、9月4日、喜界島ではレーダーによる解析で午後2時までの1時間と、午後4時20分までの1時間にそれぞれ、およそ120ミリの猛烈な雨が降ったとみられ、記録的短時間大雨情報が2度発表されました。
名瀬測候所が「50年に1度の記録的な大雨」とした豪雨。この日を含む3日間の総雨量は540ミリ以上となり例年の9月ひと月分の雨量の3倍を超えました。発生した床上浸水と床下浸水は合わせて96棟。道路の寸断などの被害も相次ぎました。
喜界町の志戸桶地区にあるグループホーム「がじゅまる」です。
当時、9人の高齢者がいる中、周囲を水に囲まれ差し迫った状況となりました。
(がじゅまる介護職員)「ここから地域の方が助けに来てくれてひとりひとりおんぶして連れていってくれた」
近くの住民の協力で避難することができたあの日以来、職員の意識が変わったといいます。
「どこで避難しようかなというのが自分たち初めての経験だったので。そのときの恐怖は忘れられない。
ちょっとの雨でも外をのぞく。自分たちも早めに避難したほうがいいねと職員の中で話は出ています」
あの豪雨から9か月がたちましたが、今も、各地に爪あとが残っています。
(記者)「喜界島の観光名所のひとつさとうきび畑の一本道です。豪雨災害から9か月たった今も復旧作業が続いています」
さとうきび栽培など農業が基幹産業の喜界島ですが、農地、水路、農道で合せて85件の被害が出ました。
(さとうきび農家阿伝地区佐藤寿一区長)「側溝の水があふれてきてあぜを流す」
さとうきび農家で阿伝地区の佐藤寿一区長は農地の復旧が終わっていないため、さとうきびの植え付けができない状況と話します。
(佐藤さん)
「いつごろできるというのが今はないものですから農家は困っている。喜界島全体ですから箇所が多すぎて手がまわらない。とにかく早くしてもらわないと何もできない」
喜界町によりますとこれまでに復旧したのは農地がおよそ6割、水路と農道がおよそ4割にとどまりますがことし3月、国が激甚災害に指定したため町は工事を急いでいます。
梅雨、そしてこれからの台風シーズン。去年の豪雨を経験した町役場はこれまで以上に警戒しています。
(喜界町防災担当平馬尚樹総務課長補佐)
「今までは地下浸透の速さや川がないということで雨に対しては無警戒というか強いと思っていた。あの大雨を経験して強い雨の時には道路の状況など注意するようになっている」
「早い情報の把握と情報の伝達。大雨の状況を思い出してどういったところでどういうことが起こるのかと考えながら常に先を見越して動くということが大切」
喜界町は、現在行っている復旧工事のほかにも大雨の際の排水能力を高めるために今後、側溝などを増やす計画です。
現状の中でどう身を守っていくか。町、そして住民は早めの避難などを意識しながら本格的な雨のシーズンを警戒します。