8・6豪雨災害から30年 死者の9割・土砂災害から命を守るためには 専門家に聞く

1993年夏の8・6豪雨災害から30年。死者・行方不明者の49人のうち、およそ9割が土砂災害によるものでした。土砂災害から身を守るにはどうすればいいのか?専門家と考えます。


1993年の夏、鹿児島市では7月のひと月で観測史上最多の1055ミリもの雨が降っていました。そこに8月6日、2時間で180ミリの局地的な集中豪雨が重なり、各地で土砂災害が相次ぎました。

吉野町竜ケ水一帯では、相次ぐ土砂崩れで国道10号や線路が寸断され、およそ3000人が孤立。竜ケ水では土砂崩れで海に落ちた人など4人が、花倉では土石流が病院を直撃し、入院患者や近くの人、15人が亡くなりました。

(記者)「鹿児島市竜ケ水です。こちらでは土砂崩れが相次ぎ、列車も被害に。30年前の爪痕は、黄色がかった緑で覆われています」

土砂災害が専門の鹿児島大学・地頭薗隆教授は、8.6豪雨災害から2日後に竜ケ水の現場を調査しました。

竜ケ水周辺は、海岸沿いに姶良カルデラ壁と呼ばれる火山の噴火で陥没して出来た切り立った斜面が続き、5キロほどの区間でおよそ110か所の崩壊が発生しました。

地頭園教授は、竜ケ水の特徴的な地形が被害を大きくしたと話します。

(地頭薗隆教授)「くぼんだ谷から土石流が来て列車を破壊し、海まで土石流が流れた。非常に大きな被害が出た場所。周辺は急な斜面があるので、山崩れがけ崩れが起こって、崩れた土砂が雨水をたっぷり含んで土石流となって谷を下る。カルデラ壁一帯の危険な場所の典型」

県によりますと、県内で土砂災害の危険箇所は、今年3月末時点でおよそ1万6000か所あります。このうち4952か所で、砂防ダムや斜面の改修などの対策が必要ですが、実際に対策が進んでいるのは1825か所で、4割未満に留まっています。

さらに、対策が行われても災害のリスクがなくなるわけではないと地頭園教授は指摘します。

(地頭薗隆教授)「防災施設というのは、これぐらいの雨には大丈夫、耐えられますよという基準で作る。それ以上の雨が降ったら乗り越えてくることもある。施設ができたとしても危険区域は残るので、危険区域の人は大雨の時には避難という行動が必要になる」

鹿児島市ではおととし、建物の損壊や住民に危険が及ぶ可能性がより高い「土砂災害特別警戒区域=レッドゾーン」およそ3100か所が初めて指定され、対応する防災マップが全ての家庭に配布されました。

(地頭薗隆教授)「安全な場所あるいは避難所に行くにはどこを通って避難すればいいのかということを地図の中に書く。行政から出された防災マップをさらに進化させて、自分たちの防災マップに育てていく。そういうことが大事」

地頭薗教授は、日頃から自分が生活する地域の危険な場所を防災マップなどで確認し、避難のタイミングや経路などを家族や地域の人たちと話し合い、身の回りのリスクを共有しておくことが大切だと話します。

(地頭薗隆教授)「地域の防災力を高めるには、それぞれの地域で何をすればいいか、地域の人、そしてそこに住んでいる家族でも一緒に考える。そういう習慣を身につけるということが大事」

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