増加する「災害級の大雨」に備えるために 情報どう活用?

増加傾向にある災害をもたらすような大雨に備えるために、情報などをどのように活用すればいいのか取材しました。

北薩を中心に河川の氾濫や浸水などの被害が相次いだ去年7月の大雨では、「1時間に119ミリの猛烈な雨」が観測されました。
気象庁は、雨の強さを表すための用語を1時間に10ミリ以上20ミリ未満の「やや強い雨」から、80ミリ以上の「猛烈な雨」まで5段階で定めています。

この中で最も強く、去年、鹿児島県内に被害を出した「猛烈な雨」とはどのような雨なのでしょうか?


薩摩川内市消防局の防災研修センターでは、雨や風などの現象を模擬体験することができます。

まず体験したのは、猛烈な雨の基準となる1時間に80ミリの雨です。

(鮫島気象予報士)「この量の雨が傘にあたると、少し怖さを感じます」

80ミリで怖さを感じるほどですが、県内では2011年11月に奄美大島の瀬戸内町で県内で観測史上最多の143.5ミリが観測され、がけ崩れや交通の遮断により孤立状態になった集落もありました。今回、それに近い150ミリの雨も体験しました。

(鮫島気象予報士)「雨の音で(周りの音が)何も聞こえません。見通しがかなり悪くなったので、この中で外を歩くというのはかなり難しいと思います」

(薩摩川内市消防局 野村伍郎消防士長)「豪雨のときは視界がきかなくなるので、極力夜間の避難は避けて、明るいうちに避難するようにしてください」


このような大雨は全国的に増加傾向にあります。県内43の観測地点で80ミリ以上の猛烈な雨が観測された回数は、以前は年平均で2回に届きませんでしたが、この20年ほどは増加し、年平均で5回以上に上っています。

さらに、おととし7月の熊本豪雨など、近年相次ぐ大雨災害の要因として注目を集めるようになったのが「線状降水帯」です。

(鹿児島地方気象台 轟日出男気象情報官)「線状降水帯とは、次々と発生する発達した雨雲・積乱雲が列をなし、数時間ほぼ同じ場所を通過・停滞することで作り出される線状に伸びる強い降水を伴う雨域」

気象庁は去年から線状降水帯が発生した場合に「顕著な大雨に関する気象情報」の発表を始め、県内でも去年7月、薩摩地方で2回発表されました。

県内で最初に発表されたのは午前3時半ごろで、全国で去年出された17回のうち半数はまだ暗い早朝などの時間帯でした。

暗い中での避難は危険度が増すため、気象庁は明るいうちの早めの避難につなげてもらおうと、今月1日から発生が予測される半日ほど前から情報を発表する線状降水帯予測を始めました。

気象庁は、発生を予測しても4回に3回は実際には発生しない「空振り」があるとしていて、まだ精度の課題はありますが、空振りをおそれず早い避難につなげることが大切になると話します。

(鹿児島地方気象台 轟日出男気象情報官)「情報をうけた住民は災害への心構えを高めて、例えばハザードマップなどで避難場所・経路を確認しておいていただきたい」

また、国土交通省と気象庁は、河川の水位が氾濫する危険がある高さに達した場合に発表されていた「氾濫危険情報」を、6月13日からは3時間以内に氾濫のおそれがある水位に達すると予想される場合にも発表するようにしました。

5段階の大雨警戒レベルのうち、危険な場所からの全員避難が必要な「レベル4」に相当し、予測に基づくこれまでより早いタイミングでの避難が期待されています。

こうした雨雲の動きや洪水・浸水のリスクに加え、土砂災害リスクを知ることが災害時に命を守るうえで大切になりますが、気象庁は危険度分布「キキクル」をホームページで公開していて、スマートフォンからでも自分の住む地域のリスクを地図上でリアルタイムで確認することができます。

(鹿児島地方気象台 轟日出男気象情報官)「どういったところで危険が高まっているか確認していただきたい。周りの状況を確認し、自ら安全な場所へ移動する判断をお願いしたい」

大雨から命を守るためにも、情報をどのように入手し、どのような場合にどこに避難するのか、事前に確認しておくことが大切になります。

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