変わる防災情報 どう活用?

きょうは「変わる防災情報」です。災害の状況に応じて市町村が出す避難情報を5段階のレベルで示した「大雨警戒レベル」です。
このうちレベル4は速やかな避難を求めるもので、現在は避難勧告と避難指示の2つがありますが、あすから勧告は廃止され、危険な場所にいる人への全員避難を求める「避難指示」に一本化されます。

また、レベル5の災害発生情報はただちに命を守る行動を求める「緊急安全確保」に、レベル3の避難準備・高齢者等避難開始は避難に時間がかかる体が不自由な人などを含む「高齢者等避難」に表現が変わります。

避難方法を確認しておく段階のレベル2と、災害への心構えを高めるレベル1は従来通りです。

避難情報をシンプルにして避難のタイミングを明確にするのが狙いですが、一方で、毎年のように変わり、数も増えている防災情報を、どのように活用していけばいいのでしょうか?道山記者の報告です。


鹿児島市が毎年、梅雨の時期に合わせて市内各地で開いている防災研修会。この日は市内北部の吉野地区で自治会長らおよそ20人が市の職員から新しい大雨警戒レベルについて学びました。

(市担当者)「実際こういう避難情報が出た時に、どこの避難所に逃げるか考えて」

(参加した住民)
「これはいいね。今度のは分かりやすい」
「避難勧告は(住民に求める行動の)具体性を欠く。指示に一本化すれば理解しやすい」
「(防災情報が)目まぐるしく変化しているので、住民が避難できるかは行政の情報発信にかかっている」


大雨警戒レベルの運用が始まったのはおととし。200人以上が犠牲となった西日本豪雨がきっかけでした。

広島県の場合、当時、大雨特別警報や土砂災害警戒情報、河川の氾濫危険情報のほか、市町村が出す避難勧告や避難指示など、多くの防災情報が発表されました。

その一方で、広島市の被災者の7割が避難行動をとらなかったというデータもあり、気象庁や自治体の出す情報が避難行動に結びつかない実態が明らかになりました。

そこで国は大雨警戒レベルとして、災害の危険度と住民に求められる行動を5段階で示したのです。しかし、同じレベル4に避難の勧告と指示が区分され、「違いが分かりづらい」との指摘があり、今回の見直しで指示に一本化されたのです。

(鹿児島地方気象台・長友勝弘気象情報官)「(勧告と指示の)どの段階で避難始めたらいいか、住民の疑問があったので、一本化され分かりやすくなった。レベル3か2の段階で準備して、4の避難指示で避難する形をとってもらえたら」

今回の見直しについて街の声は。
「警戒レベル?あんまりよく分かりません」
「(レベル4が指示に一本化されるが?)日にちは知らないが、一本化するのは知っていた。ニュースで。分かりやすくていい」

一方で戸惑いの声も・・。
「(勧告がないと)戸惑うでしょうね。少し考慮したほうがいいのでは」

大雨や避難に関する情報はこのほかにも変わります。
去年7月に熊本県の球磨川流域を中心に大きな被害を出した豪雨災害。その要因となったとされるのが発達した雨雲が次々と発生して同じ場所にかかり続け、集中豪雨をもたらす、「線状降水帯」です。
気象台は今年から「線状降水帯」に関する情報も発表を始める方針です。

ただ、大雨に関する気象情報だけでも20個近くあるとされています。数が多く、複雑化する情報をどのように活用し、避難行動につなげたらいいのでしょうか?


「防災スイッチ」を提唱する、防災心理学などが専門の京都大学・矢守克也教授です。

(京都大学・矢守克也教授)
「多い災害に適応する形で、毎年のように防災・気象情報が変わる。(国は)情報だけをいじるのはやめ、しっかり使ってもらうために考えるべき」

矢守教授は「避難や気象の情報の定着を進めるべき」と話す一方で、私たち自身が、避難する際の判断基準=「避難スイッチ」をあらかじめ決めておくことが大切だと話します。

(矢守教授)「自分にとって重要な防災・気象情報はせいぜい2~3個。例えば川の近くなら川の水位情報が大事で、『甲突川の××観測点の水位が××m超えたら逃げる』など、自分自身の『避難スイッチ(判断基準)』を持ちましょう」

関連記事一覧