岸田総理は24日、新型コロナウイルスの全ての感染者を届け出る「全数把握」を見直し、高齢者や重症化リスクの高い人に限定する新たな方針を発表しました。
見直しは自治体の判断となりますが、鹿児島県の塩田知事は24日、見直しに前向きな考えを示しました。
(岸田総理)
「発熱外来や保健所業務が相当にひっ迫した地域においては、緊急避難措置として自治体の判断で、患者届け出の範囲を高齢者、入院を要する者、重症リスクがあり治療薬投与等が必要な方などに限定することを可能といたします」
岸田総理は24日午後、新型コロナの新たな方針を発表。これまで全ての感染者の届け出を義務付けてきましたが、医療機関や保健所の負担を減らすため、自治体の判断で届け出の対象を高齢者や重症化リスクの高い人に限定できるとしました。
自治体の判断にゆだねられることになった、全数把握の見直しについて塩田知事は。
(塩田知事)
「今の医療の現場。鹿児島県も医療従事者の負担が大きくなっている。全数把握について簡素化できることろを簡素化していく方向で検討したい」
このように述べ、見直しに前向きな考えを示しました。一方で、具体的な時期や方法については、今後の政府の議論の推移を注視しながら、検討する考えです。
(塩田知事)
「必ずしも全数把握である必要はない。政府の方針がどうかということで、自治体で柔軟にできるのか、政府で2類から5類の見直しまではそうなのか、政府の方針に沿ってするしかない」
動き出した「全数把握」の見直し。そのねらいは感染者の増加でひっ迫する医療機関や保健所の負担の軽減です。感染症の専門家は現場にとってのメリットは大きいと話します。
(鹿児島大学大学院 西順一郎教授)
「1日に20万人ぐらいの患者が出るような疾患は、全数把握は無理というのが、これまでの常識。医療機関や保健所の負担ははるかに限界を通り越しているので、仕事がかなり減るというメリットがある」
一方、インフルエンザなど一部の感染症では、全数把握ではなく、指定した医療機関で感染者を調べ、全体の傾向を分析する「定点把握」が行われていて、必ずしも全数でなくともある程度の感染状況は把握できるといいます。
ただ、県全体の実数としてのデータが分からなくなることで、状況の把握が難しくなるおそれもあるといいます。
(西教授)
「重症者や入院患者がどのくらい出ているかは全くわからなくなるので(感染者が)増えているとか減っている流れはわかるが、それがどれくらい市民にとって重大なことなのか、重篤な疾患なのかという把握ができなくなる」
ここにきて動き出した全数把握の見直し。ただ、重症化リスクがある人の把握や、症状が急速に悪化した場合の受け入れ態勢整備などの課題もあり、今後の議論が注目されます。