■講評 猪俣 凡児 先生(ラジオ「さつま狂句」選者)
題材は「結婚関係に関するこそばい」とか、あるいは「孫」の句とか、「耳(みん)がこそばい」、それから「お世辞がこそばい」「褒められ、こそばい」と、こういう句が非常に多いでした。
で、似通った句で非常に選に難儀をしましたけど、できるだけ視点の違う「こそばい」に重きを置いて選びました。
それから、せっかくの句が当てる漢字が勘違いで間違ったり、あるいは元々の漢字が間違ったり、ふり(仮名)が間違ったり、そういう句があり、佳作とか準特にとってもおかしくないという句を外さなければならなかった…非常に心が痛みました。
■入選
朝帰い こそばい笑顔い 尚恐怖っ 【中道 疾風】
(あさもどい こそばいえごい なおびびっ)
こそばいち 逃ぐい孫をば 追て回っ 【小窪 笑福】
(こそばいち にぐいまごをば うてまわっ)
手がましか 亭主ん肩揉ま こそばゆし 【中野 大八】
(てがましか ととんかたもま こそばゆし)
落語家ん こそばい種い 客が沸っ 【有川 八味】
(らくごかん こそばいねたい きゃっがうえっ)
こそばいち 言かたで嬉し 初キッス 【櫨山 一球】
(こそばいち ゆかたでうれし はつキッス)
天が来た 嬉しこそばい 狂句会 【平瀬 芙蓉】
(てんがきた うれしこそばい きょうくかい)
真似ん狂句で 本当ちこそばい 授賞式 【田之上 セイブン】
(まねんくで まこちこそばい じゅしょうしっ)
好っじゃっち こそばい言葉べ 今じゃ後悔 【吉井 粋狂】
(すっじゃっち こそばいことべ いまじゃくげ)
結婚式ん こそばい祝辞じ 身悶えっ 【永谷 勝】
(ごぜんけん こそばいしゅくじ みもだえっ)
こそばいか 思わせ振いな 女将ん声 【新原 コンパス】
(こそばいか おもわせぶいな ママんこえ)
同窓会 こそばい話題し 弾ん晩 【有川 ヒロシ】
(どうそかい こそばいはなし はずんばん)
断捨離で 残けたこそばい ラブレター 【保久上 勝手耳】
(だんしゃりで のけたこそばい ラブレター)
こそばいか 笑顔で挨拶の 悪戯坊主 【安田 扇香】
(こそばいか えごでえさっの われこっぼ)
爺ちゃんが 好きちこそばい 投げキッス 【久本 樟脳山】
(じいちゃんが すきちこそばい なげキッス)
騙された こそばい言葉べ 五十年 【狩俣 康俊】
(だまされた こそばいことべ ごんじゅねん)
冗談の狂句 女房が誉むっで こそばゆし 【北森 第九】
(わやっのく かかがほむっで こそばゆし)
こそばいか 亭主ん呆え歌て 褒めたくっ 【下小牧 しも小巻】
(こそばいか てしんぼえうて ほめたくっ)
痩せたねち 挨拶ちこそばい メタボ腹 【保久上 勝手耳】
(やせたねち えさちこそばい メタボばら)
こそばいが 嘘も混ぜ混ぜ 間を繋ねっ 【坂元 うなっ】
(こそばいが うそもまぜまぜ まをつねっ)
五合灸つ こそばい言ちょい 頑固爺 【福迫 もみじ】
(ごんごえつ こそばいちゅちょい いっこっじ)
マッサージ 微妙なとこい こそばい手 【塩田 我流】
(マッサージ びみょうなとこい こそばいて)
諭吉の座 かったこそばい 栄一氏 【堀 三余】
(ゆきっのざ かったこそばい えいいっし)
誉め言葉べ 新郎新婦あ こそばい態 【亀甲 万年】
(ほめことべ しんろしんぷあ こそばいふ)
句が載れあ こそばい思もが 周囲い言っ 【前原 稔】
(くがのれあ こそばいともが まわいゆっ)
参観日 こそばい母親ん イヤリング 【川畑 光ちゃん】
(さんかんび こそばいはほん イヤリング)
語らんな 口がこそばい 喋くい婆 【上田 喜八郎】
(かたらんな くっがこそばい しゃべくいば)
こそばいか 悪口ん女房が 好っち言っ 【塩田 我流】
(こそばいか あっごんかかが すっちゆっ)
仲人の 誠てこそばい 誉め挨拶 【柿囿 山芋】
(なかだっの まこてこそばい ほめえさっ)
こそばいか 背中け届かん 老人ん手 【日高 五合灸】
(こそばいか せなけとどかん おんじょんて)
今読めば 凄ぜこそばい ラブレター 【前田 一天】
(いまよめば わっぜこそばい ラブレター)
■佳作五
初めっの ブラいこそばい 可愛か胸 【中野 大八】
(はいめっの ブラいこそばい むぞかむね)
■佳作四
こそばいか 肥えた私に 可愛ぜ言亭主 【村田 鹿の子】
(こそばいか こえたあたいに むぜちゅてし)
■佳作三
良か弔辞 仏も中で こそばゆし 【入来院 彦六】
(よかちょうじ ほとけもなかで こそばゆし)
■佳作二
こそばいか 満員バスん 隣の息 【櫨山 一球】
(こそばいか まんいんバスん つっのいっ)
■佳作一
耳の穴が こそばい美人の 甘め内緒 【永谷 勝】
(みんのすが こそばいシャンの あめないしょ)
■準特選
医者じゃれば こそばい所ゆ 触らせっ 【押領司 翠里】
(いしゃじゃれば こそばいとこゆ かからせっ)
■特選
別れ際うぇ 誠てこそばい 孫んチュー 【平澤 泰山】
(わかれぎうぇ まこてこそばい まごんチュー)
■番外
こそばいち 怒けた猫ん 猫パンチ 【濱川 白馬】
(こそばいち はらけたねこん ねこパンチ)
褒め殺し されっこそばい 仲人口 【有村 秀祭】
(ほめごろし されっこそばい なこどぐっ)
こそばいで 来賓席くば 他人て譲っ 【福冨 河童】
(こそばいで らいひんせくば ひてゆずっ)
■軸吟
手抜っ料理ゆ 褒めちぎられっ こそばゆし 【猪俣 凡児】
(てぬっじゆ ほめちぎられっ こそばゆし)