■講評 有村 秀祭 先生(ラジオ「さつま狂句」選者)
96名で192句のご投句、入選・佳作・特選まで37句、比率で言うと19.3%の狭き門。ちなみに東大の合格率は15%…ですから入選された方はひょっとしたら東大に受かるかも?残念ながら入選ならなかった方は1浪したら絶対東大に入る、と。その位思っていただければいいと思います。
題材で多かったのは「母(はは)の味」、これが20句。「母(かか)ん味」17句、「婆(ばば)ん味」15句、「焼酎」7句、「姑(しゅと)ん味」6句、「狂句の味」5句、これで合計で70句。残りの122句は「その他の味」です。だから、本当に多種にわたって考えていただいたと思います。
それぞれ上手に仕上げていただきまして、皆様方の狂句に対する熱い情熱と、それから発想力の豊かさ、観察力の鋭さ、こういうものを感じました。
■入選
即席の 味が染ん込だ 一人者 【永谷 勝】
(そくせっの あっがしんくだ ひといもん)
腰パンの 卒業写真の 苦か味 【南谷 久瓜】
(こしパンの そっぎょしゃしんの にがかあっ)
長ご添えば 三ッ星よっか 婆ん味 【並松 六弦】
(なごそえば みつぼしよっか ばばんあっ)
鍋奉行が 味じゃ未だ未だち 大概な食っ 【入来院 彦六】
(なべぶぎょが あじゃまだまだち てげなくっ)
亡母ん味 白髪なってん 舌て残っ 【平瀬 芙蓉】
(かかんあっ したげなってん してのこっ)
地震え豪雨め 堪えっ能登ん 味じょ守っ 【松下 ジャンボ】
(なえうあめ こらえっのとん あじょまもっ)
元気ん無か 五体が欲しがっ 母親ん味 【保久上 勝手耳】
(あやんなか ごてがほしがっ はほんあっ)
裏声が 一味添えた 大島ん民謡 【上田 喜八郎】
(うらごえが ひとあっそえた しまんうた)
規格外ゆ 味じゃ同っ言う 所帯魂 【今村 山姥】
(きかっがゆ あじゃひとっちゅう しょてだまし)
酷で味も 美味めち褒むい 結婚当初 【中野 球爺】
(ひであっも うんめちほむい といえはな)
婆ん料理や 目見当じゃいが 味じゃ一流 【北森 第九】
(ばばんじゅや めけんとじゃいが あじゃいちりゅ)
優し酌き ころっ変った 焼酎ん味 【坂元 うなっ】
(やさししゃき ころっかわった しょちゅんあっ)
嫁っ子い 我家ん味を 教せっ 【中村 秀翔】
(とつっこい わがえんあっを ゆっかせっ)
母ん味 彼い是いしてん 出しゃ出来ん 【堀 三余】
(はほんあっ あいこいしてん だしゃでけん)
姑ん味ず 直き受け継だ 器用な嫁 【柳村 遊月】
(しゅとんあず いっきうけちだ じくなよめ)
土地ん味っが 婆を通わすい 道の駅 【仁禮 乙女】
(じんあっが ばをかよわすい みちのえっ)
畦昼飯 婆ん握飯しゃ 一番の味 【永井 手毬】
(あぜちゅはん ばばんにぎめしゃ いっのあっ)
映えよっか 味で勝負の 田舎料理 【池江 蹴平】
(ばえよっか あっでしょうぶの いなかじゅい)
煮〆め味ず 娘い仕込だ 愛情女房 【堂脇 天進】
(にしめあず むひめいしくだ ぼんのかか)
実家て帰っ どげん嬉しな 母親ん味 【平澤 泰山】
(さてもどっ どげんうれしな はほんあっ)
薄味で 長生くせえち 女房ん料理 【小窪 笑福】
(うすあっで ながいくせえち かかんじゅい)
ヘルシーち 粗雑で味の無 婆ん料理 【野中 志野】
(ヘルシーち ざつであっのね ばばんじゅい)
デパ地下の 味見梯子で 腹一杯 【瀬戸山 博】
(デパちかの あっみはいごで はらいっぺ)
苦げビール 飲んうち味の 奴隷いなっ 【有川 八味】
(にげビール のんうちあっの どれいなっ)
年齢と共め 味ん好んも 変っ行っ 【江口 紫朗】
(とっととめ あじんこのんも かわっじっ)
婆どうし 唐芋団子ご味じゅ 頻れ競争っ 【竹元 笑喜】
(ばばどうし かいもだごあじゅ やれせろっ)
田植団子 舌いしっ付た 母ん味 【南 よんご】
(たうえだご したいしっちた かかんあっ)
婆ん塩が 味ず整えた 味噌作い 【大重 爆笑】
(ばんしよが あずととのえた みぞづくい)
咄家は 隠居すい頃れ 味が出っ 【中村 竜神】
(はなしかは いんきょすいこれ あっがでっ)
逝た母親ん 味が染ん込だ 割烹着 【馬場 日登美】
(いたはほん あっがしんくだ かっぽうぎ)
■佳作五
味ず食ろた 闇のバイトで 脳が狂っ 【内村 子猪】
(あずくろた やんのバイトで のがくるっ)
■佳作四
外ん味じ 慣れっ文句の多け 亭主しけなっ 【櫨山 一球】
(そとんあじ なれっぎのうけ てしけなっ)
■佳作三
マイコップ 焼酎と薬の 味がしっ 【内村 子猪】
(マイコップ しょつとくすいの あっがしっ)
■佳作二
田舎蕎麦 煤け暖簾が 味ず語っ 【中道 疾風】
(いなかそば すしけのれんが あずかたっ)
■佳作一
妙な味 爺い食もらせっ 様子を見っ 【大脇 若けばっばん】
(みょうなあっ じいたもらせっ よすをみっ)
■準特選
炊っ出しの 一生忘れん 人情味 【下野 落椿】
(たっだしの いっでわすれん にんじょあっ)
■特選
握飯の 味ず引き締めた 梅干 【大重 爆笑】
(にぎめしの あずひきしめた うんめぼし)
■番外
共稼っ おふくろん味じゃ 店ん料理 【濱川 白馬】
(ともかせっ おふくろんあじゃ みせんじゅい)
顔もじゃが 味の有い句を 詠ん横杵者 【福冨 河童】
(つらもじゃが あっのあいくを よんよんご)
寒が入っ 一味違ごた 吊い大根 【猪俣 凡児】
(かんがいっ ひとあっちごた ついでこん)
■軸吟
採れたてん 宅んトマトは 恋の味 【有村 秀祭】
(とれたてん やどんトマトは こいのあっ)