
■講評 猪俣 凡児 先生(ラジオ「さつま狂句」選者)
きびなご、地鶏、河豚、鯛、活き造り、こんにゃく…こういうような句が多かったです。同想句が多くて、選にばたぐろたです。できるだけ視点の違った句を選ぶよう心得ました。しかし、当てる漢字とか漢字そのもの…一番心が痛んだのは、転記する時に思い込みによるフリガナの間違いとか、そのために入選句はもちろんのこと、佳作に入ってもおかしくないという句をはずさなければなりませんでした。ですから、やっぱり何でも点検というか、確認が大事だなということをあらためて思うことでした。
■入選
久振い 出た鯛の刺身む 嗅んみっ 【田之上 セイブン】
(さしかぶい でたてのさしむ かずんみっ)
小め魚も 刺身にすっち 包丁を研っ 【平澤 泰山】
(こめいおも さすんにすっち ほちょをてっ)
下足が舌て 吸付っ慌ろた 烏賊刺身 【有川 八味】
(げそがして すちったぐろた いかさしん)
妙だ婆様 刺身な食んが 寿司は好っ 【柳村 遊月】
(すだばさま さしんなくゎんが すしはすっ)
まだ温きど 生命ば貰ろた 鶏刺身 【松下 ジャンボ】
(まだぬきど いのっばもろた といさしん)
大となけっ 目高ば刺身み すっ言孫 【保久上 勝手耳】
(ふとなけっ めだかばさしみ すっちゅまご)
真似ん狂句で 本当ちこそばい 授賞式 【田之上 セイブン】
(まねんくで まこちこそばい じゅしょうしっ)
手作いの 蒟蒻刺身みゃ 婆の自慢 【山下 矢絣】
(てづくいの こんにゃくさしみゃ ばのじまん)
黍魚子ん 見事て刺身ぬ 大皿れ盛っ 【吉岡 道場】
(きっなごん みごてさしんぬ うざれもっ)
多人数にな 柵で買て薄す 切い刺身 【福迫 もみじ】
(うにしにな さくでこてうす きいさしん)
家主しゃ今日も 鯖じゃが猫にゃ 鯛の刺身 【櫨山 一球】
(やぬしゃきゅも さばじゃがねこにゃ てのさしん)
大皿でん 腹れな満たらん 河豚刺身 【北森 第九】
(うざらでん はれなみたらん ふぐさしん)
魚ん目が 俺をば睨っ 活造い 【江口 紫朗】
(いおんめが おいをばねぎっ いっづくい)
ずぼら女房 捌っ刺身な 骨が付っ 【池上 歌子】
(ずぼらかか さばっさしんな ほねがちっ)
釣い上げっ 早速船で 刺身みしっ 【永谷 勝】
(ついあげっ さしつけふねで さしみしっ)
活っ作い 刺身も跳ぬい 海の宿 【上田 喜八郎】
(いっつくい さしんもはぬい うんのやど)
薄し切れで 具い隠れた 鯛の刺身 【原田 紅梅】
(うしきれで つまいかくれた てのさしん)
猫と同い 女房ん隙きょみて 奪っ刺身 【濱川 白馬】
(ねことがい かかんすきょみて とっさしん)
爺ん命日 虎魚ん刺身み 箸しゃ踊っ 【有川 八味】
(じんたっび おこぜんさしみ はしゃおどっ)
節約ち 透けて見ゆそな 刺身む切っ 【柿囿 山芋】
(かんじゃっち すけてみゆそな さしむきっ)
伊勢海老が 派手で踊っちょっ 活っ造い 【永井 手毬】
(いせえっが はでおどっちょっ いっづくい)
釣い舟で 捌っ刺身な 舌て踊っ 【大重 爆笑】
(ついぶねで さばっさしんな しておどっ)
野菜包丁が トラフぐ見事て 刺身みしっ 【平田 素麵】
(やせぼちょ トラフぐみごて さしみしっ)
下戸ん客き 旬の刺身に 茶を添えっ 【吉井 粋狂】
(げこんきゃき しゅんのさしんに ちゃをそえっ)
刺身好っ 水族館で 涎ゆ出っ 【永吉 豊寿】
(さしんずっ すいぞっかんで ゆだゆでっ)
独い者 猫と分け合て 食ろ刺身 【牧元 一丁目】
(ひといもん ねことわけおて くろさしん)
■佳作五
研だ包丁で 花が咲たよな ふぐ刺身 【永栄 寿桃】
(てだほちょで はながせたよな ふぐさしん)
■佳作四
先の無か 俺が毒見ん ふぐ刺身 【中野 大八】
(さっのなか おいがどくみん ふぐさしん)
■佳作三
飲まん言て 刺身ぬ見たや 気が変っ 【横手 五月】
(のまんちゅて さしんぬみたや きがかわっ)
■佳作二
カラオケを 奪合っ刺身な 干からびっ 【永谷 勝】
(カラオケを ばこっさしんな ひからびっ)
■佳作一
骨が多け 女房ん刺身な 命がけ 【野中 志野】
(ほねがうけ かかんさしんな いのっがけ)
■準特選
地の魚ん 刺身み恋ゆした 島赴任 【内野 茶柱】
(じのいおん さしみこゆした しまふにん)
■特選
馬刺どん 食たか時々 爺は跳ねっ 【櫨山 一球】
(ばさしどん くたかとっどっ じははねっ)
■番外
長げ挨拶ち 黍魚子刺身ま ずんだれっ 【中道 疾風】
(ねげえさち きっなごさしま ずんだれっ)
高価け刺身ん ゆっくい噛めち 婆が叱っ 【有村 秀祭】
(たけさすん ゆっくいかめち ばばががっ)
用心深け サバん刺身な しゃぶで食っ 【福冨 河童】
(ゆじんぶけ サバんさしんな しゃぶでくっ)
■軸吟
金蠅どが 集った刺身む 亭主しゃぺろっ 【猪俣 凡児】
(きんべどが たかったさしむ てしゃぺろっ)










