MBCラジオ

「#77 こよみ」風の歳時記

毎年のことだが、ふと気が付くとカレンダーが12月の最後の一枚となり、エアコンの温風にひらひらと揺れている。その一枚の31日分の日付も残り1週間足らず。ほぼ毎日のように目をやりながら過ごしているうちに、この暦とも永久の別れが近づいてきた。

思わず「暦」と言ったものの、暦とカレンダーは、本当に同じものなのだろうか。

この時期になると、お付き合いのある企業や団体、商店などから、次々に来年のカレンダーが届く。日本各地の名所の四季折々の風景写真や古今東西の名画、あるいは俳優やタレント、ペット愛好家のための犬や猫、お寺さんからは仏像の画像など、実に様々だ。でも、確かに毎日の日を刻むカレンダーではあるものの、これって「暦」なの?と首を傾げてしまう。

子どもの頃に近所の水道屋さんや酒屋さんから届いていた暦は日めくり型が多かった。そこには難しそうな「今日の格言、ことわざ」と一緒に大安、仏滅、友引などに加え、立春、啓蟄、夏至、彼岸などの二十四節季、さらに日の出・日の入り、潮の干満時刻などが書き込んであり、農業にも商売にも冠婚葬祭にも重宝したものだった。いや、その頃は子供のボクには何の意味もなかったが、祖父母や両親は、日付や曜日よりもそちらの情報の方を大切にしていたような気がする。

大昔、いつの頃からなのかは知らないけれど、江戸時代までは、日本の農村では文字の読めない人たちのために絵で知らせる「絵ごよみ」があったと言われている。見たことはないけれど、きっと、梅が咲けば納屋から農具を出して洗うとか、ウグイスが鳴いたら種を蒔くとか、山の雪が溶け始めたら野焼きを始めろとかを、絵で描いて教えている暦なんだろうね。まさに暮らしになくてはならない暦。日付と曜日だけのカレンダーとは似て非なるものだったような気がする。

ひるがえって今、家や職場で使っているのは暦のない、曜日と日付に国民の祝日だけが書き込まれたカレンダーだ。以前は、その月ごとの壁掛けカレンダーの余白に大切なスケジュールなどを書き込んでいたが、いまはパソコンとスマホのカレンダーアプリにすべての予定が入っていて、いつでもどこでもチェックできる。何時何分、誰々さんと会食、どこそこ訪問、何々の会議などという無機質な文字列が液晶画面に並んで、それを物差しに自分の行動を合わせている。いま、この瞬間から先の予定なんて、必ずやって来る保障なんかないのだけど、そんな架空の未来でカレンダーを埋め込んで、そして、永遠に未来があるような錯覚の中で日々の時間をやり過ごしているのだろうね。

いよいよ、今年も残りわずか。今日は多くの会社や役所で仕事納めとなり、今夜の盛り場はそれなりに賑わうのだろうか。2025年、令和7年はどんな年だったのだろう。憂きことも辛かったことも、うれしかったことも、楽しかったことも、大きく深呼吸して、もう一度噛み締め、間もなくやってくる新しい年をしっかり踏み出すエネルギーにできたらと思う。

暦は季語ではないけれど、「暦果つ」は年末、冬の、「初ごよみ」は新年の季語。

皆さん、どうぞ、よいお年を。

MBCラジオ『風の歳時記』
テーマは四季折々の花や樹、天候、世相、人情、街、時間(今昔)など森羅万象。
鹿児島在住のエッセイスト伊織圭(いおりけい)が独自の目線で描いたストーリーを、MBCアナウンサー美坂理恵の朗読でご紹介します。
金曜朝のちょっと落ち着く時間、ラジオから流れてくるエッセイを聴いて、あなたも癒されてみませんか。

読み手:美坂 理恵/エッセイ:伊織 圭

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