MBCラジオ

「#75 木枯らし1号」風の歳時記

道のそばで山茶花の淡いピンクの花が揺れている。遥か空の上から鳶の鳴き声が聞こえてくる。裏山から吹き降ろす風が急に冷たくなってきた。それでも木枯らしと呼ぶほどの風ではない。子どもの頃の冬の風は、耳が痛くなるほど冷たかった。いわゆる「木枯らし」という言葉にピッタリの身を切るような北風だ。一緒に遊ぶ仲間たちの耳が真っ赤になっていた。これも地球温暖化の影響なのか、いまの師走の風にはまだ秋の名残がある。

木枯らしで思い出したのだが、毎年、秋の終わりから冬の初めにかけて気象庁が発表する「木枯らし1号」。冬の到来を告げるこの発表の基準は、この時期に初めて吹く毎秒8メートル以上の北よりの風のことなのだそうだ。そういえば、テレビニュースでよく耳にするのだが、鹿児島で「木枯らし1号が吹きました」というのは耳にしたことがない。

実は、木枯らし1号は東京と近畿地方だけの地域限定なんだね。もちろん、当たり前のことだが、東京、近畿以外でも、この季節、木枯らしが吹かないわけがない。それなのに、なぜ、全国各地の地方気象台はそれぞれの地域での初木枯らしを無視しているんだろう。

調べてみたのだが、木枯らし1号がなぜ東京と近畿地方だけなのか、今となってははっきりしないらしい。昭和40年代というから、今から半世紀ほど前ににマスコミの要望で始まったらしいのだが、正式な観測情報というよりは、季節の話題としてのお知らせに過ぎない。東京、近畿地方以外の地域から「発表してほしい」という要望もないそうで、そのまま惰性というか、仕方なくというか、「地域限定商品」で続いている。地方のマスコミも各地の気象台に「発表しなさいよ」と要望してみたらどうだろう。

 木枯らし1号の連想で思い出しのだが、年が明けて冬を通り過ぎると「春一番」が吹く。立春から春分の間に風速8メートル以上の南寄りの風が吹いた時に発表される。こちらは全国どこでも発表されているのだと思い込んでいた。ところが、どうして、北海道、東北と沖縄では初めての強い南風が吹いても「春一番」が発表されないのだそうだ。キャンディーズの「春一番」の歌詞「♫雪が溶けて川になって流れていきます」は春を待ち望む雪深い東北地方のイメージなんだけどなぁ。

 そんな話を昭和生まれの友人としていたら、そのオヤジいわく、気象庁やメディアの天気予報に言いたいことがあるとのこと。その一つ、なぜ、全国予報の際に北日本、東日本、西日本というのに、南日本がないのかといきまいている。言われて見たらそうだよね~。鹿児島では、この放送が流れている南日本放送、それに南日本新聞、南日本銀行など南日本という呼び方が定着しているのに、全国のお天気情報では聞いたことがない。

 そして二つ目が、画面に登場する気象予報士が雨の予報を告げながら、しばしば「念のため折り畳み傘を持ってお出かけください」と呼びかけることだ。この田舎育ちのオヤジに言わせると「折り畳み傘は電車などに乗る都会人が使うもの。田舎の人たちは普通の雨傘を使うし、そもそも雨具をお持ちくださいでいいのに、なぜ折り畳み傘と限定するんだ」とご機嫌斜めだ。なるほど、一理なくもない。  今年も残り3週間。さぁ、そろそろ賀状を書き始めなくちゃ

MBCラジオ『風の歳時記』
テーマは四季折々の花や樹、天候、世相、人情、街、時間(今昔)など森羅万象。
鹿児島在住のエッセイスト伊織圭(いおりけい)が独自の目線で描いたストーリーを、MBCアナウンサー美坂理恵の朗読でご紹介します。
金曜朝のちょっと落ち着く時間、ラジオから流れてくるエッセイを聴いて、あなたも癒されてみませんか。

読み手:美坂 理恵/エッセイ:伊織 圭

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