優勝してもなお・・・「同じ土俵で戦いたかった」。
3月5日(日)に、鹿児島市街地から姶良市重富を折り返す42.195kmで争われた「鹿児島マラソン2017」。8.9Kmのファンランも含めると、県内外から約12000人のランナーが参加しました。
そのレースの先頭で優勝争いを繰り広げたのが、実業団所属の招待選手ら5人です。
この中に、特別なライバル関係を持った選手がいました。
鹿児島城西AC所属の飛松佑輔選手と、京セラ鹿児島所属の中村高洋選手です。(上記写真の左端が中村選手・中央が飛松選手)
県下一周駅伝でも活躍する2人は、今シーズン3度、互いのタイムが比べられる大きな大会がありました。去年12月の福岡国際マラソンと、先月の県下一周駅伝の1日目と5日目で、同じ区間を走ったとき。いずれも中村選手がタイムでは上回り、言わば「3勝」・・・飛松選手はこの鹿児島マラソンでの雪辱を誓っていました。
そんな中、30キロ過ぎのスペシャルボトルを手に取った飛松選手は、ライバルの中村選手に併走し、自分のボトルを渡そうとしたのです。
これに中村選手は柔らかい表情で「大丈夫だよ」と答えます。
この瞬間を飛松選手は・・・
「きょうは、同じ土俵で戦うことが出来なかったので、せめてボトルだけでもと思って・・・最後まで中村さんと争いたいという気持ちがあったので、給水してもらおうと思ったんです。」
実は、一般参加の中村選手は、飛松選手よりも後方の集団の中からスタートせねばならず、スタートダッシュで体力を消耗します。しかも、招待選手だけに認められるスペシャルドリンクを入れたボトルを置くことも出来ないのです。
この状況を思い、レース終盤の「厳しくなる」前にスペシャルドリンクを勧めた飛松選手。アスリートの素晴らしさを感じた瞬間でした。
しかも、この後2人が実業団選手を突き放してリードを築くのですが、そのシーンでは・・・
「中村さんが声を掛けてくれて・・・「二人だけになったね」と。自分も、「ですね」と会話しました。」
まるで、優勝をかけた「共闘」とでも言うような展開。
その後、去年、同じくらいの距離のときに先頭を譲り優勝できなかった悔しさと、レース前から「中村選手に勝ちたい」という思いを目標にしていた飛松選手が抜け出しました。
飛松選手は、自己ベストタイムを縮める2時間15分32秒(速報値)でフィニッシュ。去年のチャンピオン・旭化成の吉村選手の出した記録を越える大会新記録での優勝となりました。
レース後のインタビューでも「優勝はしたのですが・・・ライバルの中村選手と同じ土俵で戦って決めたかった」と話した飛松選手。
アスリートの「気持ち」のドラマに、これからの活躍が益々楽しみになりました。