サッカーが教えてくれたこと…。「もうひとつのW杯」取材日記(3)

8月5日からスウェーデンの中央部、鹿児島からは直線距離で約8400km離れたカールスタッド市を中心に行われている、INASサッカー世界選手権、通称「もうひとつのW杯」の取材のためスウェーデン支店に居ます。
「北欧の地」を感じながらの取材活動を、今回は「日記形式」で記録することにしました。
知的障がい者サッカー日本代表の様子を少しでも感じて頂ければと思います。

-店主・松木圭介

Day3 8月15日(水) 曇りのち晴れ

AM7:30 朝の散歩

順位決定トーナメント当日の朝は、キックオフ時間に合わせていつもより早いスタート。眠そうな顔をした選手が少し居たのは、緊張で眠れなかったせいだろうか?
今大会での初の勝利を目指すチームを、少しづつ明るくなる空が迎えた。

AM10:30 ランニング

いつもよりもペースを上げてのランニング。
スタッフ陣が掛ける言葉に力がこもってくる。それに応えるように選手達は走っていた。
最終地点に帰ってくる順番がここ数日とは変わった…試合に掛ける思いが見え始め、選手たちの気持ちの変化を感じた。

(ランニングの表情も引き締まってきた)

その頃…宿舎では用具系の代表スタッフの方が試合前の準備に追われていた。
最後のアップ用の練習用具から、給水ボトル、選手達が着るユニホーム…大変な量だ。
「こっちに来てから、壊れる選手が多くて修理が大変なんです。」…話を聞いている途中に教えて下さったのは、選手達のスパイクのこと。練習会場などのピッチとの相性が良くないらしく、ソールが剥がれることがあり、接着剤で固定して修理しているそうだ。もちろん、綺麗に拭きあげられたスパイクが選手たちの足元に戻っていく。
「これを履いた選手が、点数とってくれたら嬉しいですよね」…優しい顔が笑顔に変わる瞬間が見たいと思った。

(支えてくれるスタッフが居るから…)

この日のお昼には、試合に向けての「力飯」として、お餅が登場。
ここでもスタッフが活躍。抜群の焼き具合とタイミングで選手たちが待たないように手渡していく。
「もうひとつ食べる人!」、スタッフの言葉に選手の手が上がる。洋食が続く選手達にとっては、日本食がリフレッシュにもつながっているようだ。

(力飯はお餅!焼き加減も抜群でした!)

PM0:30 出発前ミーティング

スウェーデン戦への出発を前に最後のミーティング。
部屋の空気が、密着取材を始めてから一番張り詰めていた。
ここまで予選リーグ3試合で白星無し…。第1の目標であった「ファイナリスト」を達成できなかったチームにとって、何としても手に入れたい1勝だ。
戦術が確認されたあとに、スターティングメンバーが発表された。鹿児島関係では谷口拓也選手が先発出場、原良田龍彦選手がベンチ入りとなった。
西眞一監督の言葉も語気が強くなる。それに呼応するように選手の目の色が変わる。最後は、敵チームの分析などを担当するスタッフ・映像班が作ったモチベーションVTRで気持ちを高める。

西監督が一言、「試合に行きましょう!」。
文字では表しきれない選手・スタッフが一丸となった返事に、チームが1つになったのを感じた。
地元・スウェーデンとの対戦会場に向かい、日本代表はバスへと乗り込んだ。(…つづく)

(国代表のプライドをかけた戦い)

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