サッカーが教えてくれたこと…。「もうひとつのW杯」取材日記(2)

8月5日からスウェーデンの中央部、鹿児島からは直線距離で約8400km離れたカールスタッド市を中心に行われている、INASサッカー世界選手権、通称「もうひとつのW杯」の取材のためスウェーデン支店に居ます。
「北欧の地」を感じながらの取材活動を、今回は「日記形式」で記録することにしました。
知的障がい者サッカー日本代表の様子を少しでも感じて頂ければと思います。

-店主・松木圭介

Day2 8月14日(火) 雨

AM8:00 朝の散歩

きょうは、朝から冷たい雨が降る。選手たちの体調を考慮して、朝はストレッチをゆっくりする形に。長い遠征生活では体調管理も勝つためには必要な条件。スタッフ陣は選手の食事にも目を配り、明日の試合、「一勝」へベストコンディションを作るべく、今朝もスタートした。

(雨のため、ガソリンスタンドが練習会場に早変わり?!)

AM10:30 公式練習

(得点への意識を高く!)

いつも通りの体起こし・基本のパス交換からスタートした練習。ただきのうに比べると試合前日ということもあり、選手達を「高める」声掛けが続く。
いかに「戦う」状態に持っていくか?冷たい雨が降り続くなかでは尚更だろう。戦術練習では、あすのスウェーデン戦に向けて、前日の分析を生かしたプレーを「理解」するための動きが続く。細かいポイント、伝えたい事がある場面では、西眞一監督がプレーを止め、具体的かつ丁寧に選手たちに伝える。スポーツの指導では良く見られる場面だが、西監督は違う。対象選手の目を見て確認、その後、周りのチームメイトにも目配せをして確認。選手から「理解」の合図が出るまで、一拍置く…出なければもう一度…。出たとしても、大事な場面ではおさらいをしてからプレーに戻る。繰り返し伝えることは知的障がい者サッカーの世界では更に大切になってくる。

(ゲーム形式でスウェーデン戦に向けた調整を行う日本代表)

最後は選手・スタッフが一緒になり紅白に分かれて試合形式で調整。いいイメージで終われただろか?鹿児島県代表チームでも活躍する谷口拓也選手は、縦へのパスや自身での抜け出しをアピール。原良田龍彦選手は、最後、ポストに当たる惜しいシュート…自陣に戻りながら仲間にも「ナイシュー(ナイスシュート!)」と声を掛けられ笑顔。でも、悔しさが交じっていた。

それにしても、カールスタッド市内のグラウンドの多さに驚く。
ホテルからすぐの場所…歩いて10分以内にも、気付いただけで2つ。それぞれ規模は違うが、街々にグラウンドがあって「地域のチーム」があるのを感じる。日本代表の練習拠点は天然芝2面に人工芝、クラブハウスにテニスコートもあって、日中は地元の年配者がテニスを楽しんでいた。代表スタッフの方の話では、週末は地元チームと思われる子供たちがサッカーを隣でしていたらしい。学校単位が基本となっている日本と比べて、地域に根付いたスポーツ文化があるのも感じた。

PM8:15 ミーティング

情報分析スタッフが作った映像を基に、翌日の戦い方のポイントを伝える西監督の言葉が、強くなる。部屋に漂う空気が張り詰め始め、選手たちの目が変わる…試合前日を感じるには十分だった。
後半は、選手たちが作戦ボードを囲んで、自ら、スウェーデンとの戦い方を意見交換。まずは選手自身で。話が動かなかったり、さらに気付きが欲しい部分では西監督がきっかけを与える。
一旦、話がまとまったところで終わるかと思いきや、代表チームのキャプテンを務める「とく」こと徳村雄登選手が、別の視点から伝えたいことがあると話し出す。西監督は笑顔になり、その言葉にさらに話が弾み、ミーティングは続いた・・・サッカーが本当に好きなんだなという思いが、勝敗の行方を気にする思いを上回った夜だった。

(作戦ボードを囲み戦術を確認する日本代表)

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