• どうして?こうして!鹿児島
  • 皆さんの身の回りの疑問やご意見を募集しています。応募は「MBCアプリ」、メール(news@mbc.co.jp)、または、〒890-8570 MBC報道部までお送りください。

漬物なぜ ラーメン店の謎

ご主人の転勤でおととし鹿児島に引っ越してきた鹿児島市の本郷さんの疑問です。
「鹿児島のラーメン屋に行くとほとんどのお店で最初に大根の漬物が出てきます。どうしてですか?」

ラーメン屋で無料で漬物が出されるのは鹿児島では当たり前ですが、実は独特な風習なのだそうです。
いったいどうして出されているのか?柳原レポーターの取材です。


鹿児島市内のラーメン屋。店を訪れた客に無料で出されていたのは大根とキュウリの浅漬けです。

「(漬物が)ついていないとラーメン屋さんじゃない」

ラーメン屋で出されるこうした漬物について鹿児島県民は…
「まず(店に)入ったらすぐ漬物を食べてお茶を飲んでラーメンを食べる」
「大好きなのでよく食べます」

しかし、由来を聞くと…「自然な昔からのならわしなのかな」
一方、県外の人は…
(東京から)「今まさに食べてきた Q何を? ラーメンを。漬物が出てきたよ Q出てきたときどう思った? 漬物出てくるんだって

どうして漬物を出しているのか、ラーメン屋にも聞いてみましたが…

(らーめん食堂元斗好軒 前田真宏さん)「鹿児島のラーメン屋さんはみんな漬物を出されますもんね。漬物を出さないという考えはなかった。これ(漬物)はラーメンとセットだろうという」
由来ははっきりしません。


そこで、鹿児島の歴史や文化に詳しい志學館大学の原口泉教授にうかがいました。
(志學館大学 原口泉教授)「ラーメンを食べに来たお客さんにも“茶いっぺ”そして漬物が薩摩のおもてなしですよね。それがなくて水だけでしばらく待たせてラーメンというわけには、薩摩のおもてなしは成り立たないですよね」

原口教授は漬物は昔ながらの「薩摩のおもてなし」だといいます。

(原口教授)「鹿児島で多い野菜はでこん(大根)です。(昔は)自分ちで(大根を)作りますし、野菜(大根)も自分ちで漬物にしますし、いつでもうちの中にありますから、お客さんが来たらまず漬物を出すのが礼儀」


ラーメン屋を300軒以上食べ歩きブログなどで鹿児島ラーメンの情報を発信するラーメンブロガー「ろいまんさん」も原口教授と同じく漬物は「おもてなし」だと考えています。

(ろいまんさん)「(鹿児島は)もともとお茶請けでお菓子の代わりにお漬物を出す習慣があったというのがひとつと、ちょっとしたおもてなしという感じで出しているのではと思っています。県外ではあんまり見たことがない」

ろいまんさんによりますと、漬物を出す習慣は1947年創業の鹿児島ラーメンの老舗「のぼる屋」から始まったといいます。
そして、ほかの店にも広がり、今や鹿児島のラーメン文化に欠かせない存在となったのです。


ろいまんさんが漬物へのこだわりを感じると話すこちらの店では鶏ガラと豚骨を使ったあっさりしたスープが特徴のラーメンに合うよう、店主が試行錯誤を重ねてたどり着いたレシピに従い、毎日、手作りをしています。

(ろいまんさん)「最初に食べた時からここの漬物はおいしいなと思っていました。」
(柳原)「いいぐらいにつかってますね。唐辛子のこのピリッと感もたまらないですね」
(ろいまんさん)「漬物がおいしい店はやっぱりラーメンもおいしい気がするので」

(らーめん食堂元斗好軒 前田真宏さん)「夏場はきゅうりを多くして冬場は大根の割合を多くして、冬場は大根のほうがおいしいので、自然と漬物自体もおいしくなりますよね」


ろいまんさんが漬物へのこだわりを感じるという店はほかにも。
昔ながらの豚骨醤油スープが特徴の鹿児島市のアイアイラーメン東開店です。

こちらでは大根の漬物が出されています。

(愛情一杯グループ 久留知晃代表)「大根がなくなる時期があるので、そのときはどんどん北にいって、最終的に北海道から直送で送ってもらうというところまでしています。旬の大根を仕入れて漬物にしている。おかげさまでお客さんからも好評」

漬物は、市内にある製麺工場の一角で週におよそ250キロの大根を使って作られています。カットした大根を北海道産の真昆布と混ぜて、薄口しょうゆや塩などを使った調味料に3日間、漬け込めば完成です。

(ろいまんさん)「単体でもいけそうな味ですよね」
(柳原)「大根は薄めに切ってあって、昆布もいいうまみが出ている」

こちらでは、客の要望もあり、3~4年ほど前から持ち帰り用の漬物の販売も行っています。


今や鹿児島のラーメンに欠かせない存在となった漬物ですが、一方で、店側には葛藤もあるといいます。

(らーめん食堂元斗好軒 前田真宏さん)「ラーメンの原価も上がってきていてそれでも値段を上げられない中で漬物を出さないといけないっていう、やっぱり喜んでいただきたいので、そこは崩せない」

(愛情一杯グループ 久留知晃代表)「Q大根高いなと思う時もあります? ありますあります。心で泣いています(でも)食べてくださいって言って持っていっています。昔からの良き鹿児島のラーメン屋さんの文化というのは引き継いで、漬物はやり続けたいなと思っています。

ラーメン屋の漬物には鹿児島ならではのおもてなしの心、そして店主たちの情熱がたっぷりと詰まっていました。


この店側の思いを知り、質問をくれた本郷さんも喜んでいました。
本郷さん「鹿児島はすごく人が温かいですよね。人柄がいいというか、鹿児島のよさですよね。おもてなしというか、待っている間のサービスがすごいなと思いました。店によっても味が違うので、いろんなラーメン屋さんに行きたい