きばっちょいもす 瓶の中の小さな世界「ボトルシップ」に魅了 82歳の元自衛官男性「生きがい」
鹿児島県薩摩川内市の山あいにひっそりとたたずむアトリエ。ここで、ボトルシップを黙々と作るのは、太田實さん(82)です。帆船や貨物船など、これまで手がけた作品が並びます。
太田さんは宮城県出身の元自衛官。30年ほど前、薩摩川内市に移り住みました。ボトルシップづくりは独学。27歳の時に始め、ことしで55年になります。これまで作品展や体験教室も開きました。
(太田さん)「ウイスキーのコマーシャルで(瓶の中に)船を作っているのを初めて見た。そのうちに作ってみようかなと」
この日、作り始めたのは大型の客船です。手書きの設計図には、組み立てる順番が細かく記されています。今回使う瓶の口は直径わずか、1.8センチ。客船を細かなパーツに分けて、鋸や、やすりでかたどっていきます。
筆で色づけしたら、船底の方からパーツを瓶に入れていきます。接着剤を専用の棒で慎重につけ、固定します。
(太田さん)「船首・船尾の位置、バランスのとり方が一番難しい。もう一点、ペンキの塗り具合。7回くらい塗る」
細かい作業が大好きという太田さん。一方で、元自衛官だけに、鉄アレイにハンドグリップと、毎日の運動も欠かしません。
そして、こんな意外な特技も。皿回しならぬ、茶碗回し。この日は、近くの海水浴場で訪れた人に披露しました。
(太田さん)「小さいことにこだわらない。ストレスをためないように」
「小さいことにはこだわらない」という大らかな生き方。その一方で、ボトルシップづくりでは小さなパーツにこだわり、繊細な作業で組み立てていきます。
作業開始から、およそ1週間。
(太田さん)「あとはもう1回ペンキを塗れば終わり」
瓶の中に浮かぶのは「全長13センチの大型客船」。小さな瓶の中の世界ですが、大海原を進む客船の姿を想像すると、夢が広がります。
船体には地元、薩摩川内市の平佐西小学校の校章を描いて、後日、学校に贈ることにしました。子どもたちに「たくさんの人の思いをのせる大型客船から、人のきずなの大切さを感じてほしい」との願いをこの作品に込めました。
(太田さん)「作る時はなかなか大変だが、完成した時の満足感、喜びは何とも言えない」
(義理の妹・濱田ルイ子さん)「とにかく器用。元気だし、明るいし、人に親切だし。まねしたいけど、なかなか私にはできない」
13年前に妻を亡くした太田さん。ボトルシップづくりが生きがいになっているといいます。
(太田さん)「たくさんの方に寄贈したり、教えてくださいと(言われて)、それが一番の生きがい。つくづく自分でもあーよかったなと思う。この歳になって」
太田さんが手がけるボトルシップ。今度は、どんな夢のある作品が生み出されるのか楽しみです。