トコブシ漁 自衛隊基地工事が始まった馬毛島でも解禁 変わる風景(2023年6月16日放送)

種子島では特産のトコブシの漁が地区ごとに順次、始まっていて、今月からは馬毛島周辺でも解禁されました。今年は自衛隊基地工事が始まり、漁場には変化も出ています。


西之表市の種子島漁協。朝、島で穫れた魚が水揚げされます。
仲買人が品定めをしているのは今が旬のトコブシ。アワビの仲間で、地元ではナガラメと呼ばれています。この日は、いつもに増して注目が集まりました。

(仲買人)
「久しぶりに揚がった。大きいのが。馬毛島だからね」
「今年初めて見るこの大きさは。(馬毛島は)サイズは全然違う」

6月に入り馬毛島のトコブシ漁が解禁。去年より2000円近く高い、キロ9000円を超える高値で取引されました。

(種子島漁協 田原政人業務課長)「いい場所で獲れないので、その分減っている。(例年の)3分の1もない」

(仲買人)
「一番獲れていた漁場が(基地)開発で使えなくなっているので、皆で心配している」
「高すぎる。商売できないです」

種子島から12キロ離れた場所に浮かぶ馬毛島。漁協に揚がるトコブシの半分以上が馬毛島で獲られています。
主要な漁場は島の東側。特に横瀬と呼ばれる周辺です。しかし、馬毛島基地の建設にともない、種子島漁協は今年2月、漁業補償と引き換えに横瀬周辺の漁業権を放棄。今年から立ち入ることができなくなりました。

能野勇(よきのいさむ)さん(68)。30年以上、馬毛島でトコブシ漁をしてきました。能野さんは、基地受け入れを容認し、建設作業員を送迎する海上タクシーを運航しています。一方で、変わりゆく漁場の風景を、複雑な思いで見つめていました。

(能野さん)「さみしいよ。山がなくなる。全然変わってきた。森がなくなった。島という島が残らない」

海辺に建てられたポールは、漁業制限区域の境界線を示しています。そこに警戒船が近づいてきました。

「補償区域に近すぎるので、もっと移動してください。陸に上がると防衛省から注意を受けるので」

能野さんが潜れる漁場は大幅に縮小されました。

馬毛島はかつて「宝の島」と呼ばれ、豊かな自然が漁師の生活を支えてきました。

(能野さん)「馬毛島に行ったら穫れる。イセエビ、魚突き、トコブシ。1年間追える。(トコブシは)1日15キロくらい。それが最高(記録)だよね」「7、8年前からおかしくなってきた。飛行場ができてから。ハゲ山になって」

トコブシの漁獲量は減少の一途をたどっています。餌となる海藻の減少が原因といわれますが、馬毛島の開発が追い打ちをかけたと、能野さんは感じています。

(能野さん)「山がない。海には山から流れてくる養分が良いということ」「雨が降れば、泥水が海に流れてくる。石が埋まってトコブシはいなくなる」

(能野さん)「山はない。森はない。海はにごっていく。これでは防衛省に(馬毛島を)渡した方がいいなと。反対しても(漁で)食べていけない」

(能野さん)「馬毛島のナガラメだよな、型がいいわ。肥えてる」

4時間、休みなく潜り続けて獲ったトコブシは例年の半分。それでも、できる限り漁は続けたいといいます。

(能野さん)「好きだからね。一番得意なことだからこれが。楽しみだよ。大きいのを見つけたら」