独自の七草風習「七所雑炊」
鹿児島では七草の日には子どもの健やかな成長を願って神社にお参りしたり、七軒の家を回って七草がゆをもらったりする風習がありますが、鹿児島独自といわれています。
このような風習が行われているのはどうしてなのか?池田記者の取材です。
7軒の家で七草がゆをもらうのが「七所雑炊」といわれる鹿児島の風習です。
七草の日に七草がゆを食べて無病息災を祈る風習は全国的にあるものの、まるで七五三のように子どもの成長を祈るのは鹿児島独特だといいます。
鹿児島の七草にはどうして独特の風習があるのでしょうか?鹿児島の歴史・文化に詳しい志學館大学の原口泉教授に聞いてみました。
(原口泉志學館大学教授)「いわば地域社会へのデビューといっていい」
数え年の7歳は地域社会の一員として認められる年齢。江戸時代に地域ごとに年上の子どもたちが年下の子どもたちを指導する独自の「郷中教育」が行われていた鹿児島においては、地域を回り、地域社会の一員になったあいさつをする意味があったのではないかということです。
(原口教授)「地域でその子が7歳になったという一番大事な行事。デビューなんですね。地域社会が生きている証拠」
少なくとも江戸時代には武家を中心に七草祝いが行われていて、その後、庶民に広まった風習だということです。ただ、現代においては地域のつながりが薄まって近所を回る家庭は減りつつあります。
(原口教授)「子どもの健やかな成長を望んだ年中行事なので、これはなくなると寂しい。子どもの無事な成長と地域のコミュニティー、人間関係が濃密であるときずながあるということは失ってはいけないものだと思う」
「七所雑炊」の風習は奄美でも「七草雑炊」として行われています。奄美市の小浜保育所でもきょう子どもたちに七草がゆが振る舞われました。
(且友紀子さん)「食文化を伝えることと、子どもたちが元気で健康に過ごせるようにという思いを込めて出しています」
一方、7軒の家をまわるのが難しい子どもたちのためにと、姶良市加治木町では会場内に7種類の七草がゆを準備し、かゆをもらいながら歩いて回るイベントが開かれました。
このイベントは今年で13回目です。
(市野俊明会長)「晴れ着姿の子もたくさん来られて、元気に育ってほしいなということで、お配りしております」
江戸時代から根付く鹿児島の七草祝い。時代に応じた変化はあるものの子どもの健やかな成長を願う気持ちは変わらないようです。