ふるさと新時代 カフェ+民泊「田舎に新たな価値観を」平成の大合併後、人口4割減 霧島市横川地区

鹿児島県内では平成16年=2004年から始まった市町村合併で、96あった市町村が43になりました。財政などが強化された一方で、人口減少や高齢化などが加速している地域もあります。

「平成の大合併」から20年、ふるさとはどう変わったのか?シリーズ「ふるさと新時代」と題し、地域の今を見つめます。今回は霧島市・旧横川町で、空き家を改修し地域活性化に取り組む女性です。

霧島市北西部の旧横川町。シンボルでもあるJR肥薩線の大隅横川駅は、県内で最も古い木造駅舎です。

駅前の横川商店街に3年前、オープンしたカフェ兼ゲストハウス「横川kito」。空き家だった築94年の履物店を改修しました。地元の食材を使ったランチが人気で、市内外から多くの人が訪れます。

(カフェの利用者)
「インスタグラムを見て雰囲気が良かったので。パスタがおいしい」「落ち着いていて居心地が良い」

横川kitoの代表・白水梨恵さん(36)、鹿児島市出身です。4年前、まち歩きイベントをきっかけに横川地区にほれ込み、移住。夫と4歳から9歳の子どもの家族5人で暮らしています。

(白水さん)「まち歩きをしたときに、すごく面白いと気がついた。お酒を飲んだら家族だし、住民性がすてき」

2005年に国分市、霧島町、横川町、牧園町、溝辺町、隼人町、福山町の1市6町が合併し誕生した霧島市。人口はおよそ12万4000人と鹿児島市に次ぐ規模ですが、そのおよそ8割を国分、隼人地区が占めています。

一方、合併時5475人だった横川地区は、現在3345人まで減少。駅前商店街はシャッターが閉まり、空き家も目立ちます。

(白水さん)「外から人を連れてくる目的で店を作った。人の足がまちへ向く仕掛けを作って、駅以外のまち並みもレトロで可愛いいので、そういうところももっと知ってほしい」

SNSで地域や店の様子を発信。宿泊客の8割以上が県外からで、横川の歴史や魅力を発信する拠点になっています。

(白水さん)「“げたんは”というお菓子で、横川発祥なんです」「かつて横川は鹿児島と、宮崎・熊本をつなぐ物流拠点だったから、鉄道に乗せて横川で作られたお菓子が広まっていったんじゃないかなと」

(島根からの宿泊者)「まちが持つ歴史と一緒に味わえると、旅行に来て良い場所に来られたと思う」

(白水さん)「普段はこのまちに足が向かない層の方々も、うちの店がきっかけで興味を持ってもらって、せっかくだから散策してみようかと、歩いたら、おもしろいところがたくさんあったと」

「きっかけになっているのは、うれしい」

去年開かれた駅の開業120年イベントでは、商店街通りにキッチンカーや出店も並び、市内外からおよそ1200人が訪れました。

(愛甲さん)「猫さえ通らない日もあるのに、何十年ぶりか。うれしかった」

横川で生まれ育ち、大隅横川駅の保存活用を続ける愛甲信雄さん(64)。多い時には月に4、5回店を訪れます。

(商店街を歩く愛甲さん)「ここはかつて全部店だった。朝から夜まで人の通りが絶えない町だった」

横川地区では4年前、横川警察署が幹部派出所に、来月には鹿児島銀行の代理店が閉鎖し、ATMのみの取り扱いになります。

(愛甲さん)「便利なところが良いのだろう、若い人たちは。さみしい」

白水さんの活動は、地元の人にとって希望になっていると話します。

(愛甲さん)「頑張れば、僕も私も何か出来るんだという希望になっている。再生の旗が上がったような意味がある」

(白水さん)「このまちを面白がる人が増えたり、地元の方がこれやってみたいと動き出す人が増えたり、まちの未来に繋がることをどんどん企むという意味の『企図』」

先月からは、ある取り組みを始めました。地域活性化のための新たな拠点づくりです。

明治末期に建てられたとされる国の登録有形文化財、池田家住宅。かつては住宅兼店舗として米などを売っていました。住人が亡くなり、およそ35年前から空き家になっています。

(白水さん)「横川のまちの歴史の1ページを支えてきた場所なので、何とかいかしたい」

(池田家親族 池田浩明さん)「親戚が集まる場所で、夏は蚊帳で寝るのが楽しみだった。でも近くに住んでいる人がいないので、どう使うか考えていた。人が遊びに来たり、お茶を飲みに来たり、近所の人としゃべりに来る場所になってくれれば」

横川が発祥といわれる郷土菓子「げたんは」の製造販売や、レンタルスペースとして貸し出すほか、IT関連の人材を育てる講習会などを開く予定です。

この計画は去年、中小店舗の挑戦などを応援する全国のコンテストで、最高賞を受賞。賞金の500万円を改修費にあて、今年夏の開業を目指しています。

(白水さん)「このまちにすでにある良いところ、レトロさや手作り感をいかして、今度の価値観に合うようなまちになれば」

「自分たちのまちは田舎だけど良いよねって、堂々と自慢する未来がこのまちにあるといいなと」