• きばっちょいもす
  • 恒例のシリーズ「きばっちょいもす」では、元気なお年寄りを紹介します。

90歳の現役美容師「きばっちょいもす」笑顔とおもてなし 鹿児島県で最高齢

鹿児島市上本町にある、やまの美容室です。経営するのは山野ハツエさん、90歳。1959年=昭和34年に開業し、ことしで63年になります。
鹿児島県美容生活衛生同業組合によりますと、山野さんは県内最高齢の現役の美容師です。美容師になるまでは苦労がありました。

1931年生まれの山野さん。太平洋戦争末期、1945年の上町空襲で父親を失いました。14歳のときでした。その後、看護師になりましたが、手先の器用さを買われ、知り合いから美容師の道に誘われました。

(山野さん)
「友達に、『あなたは手が器用だから、髪結いさんに来てくれない?探してらっしゃる』と言われて。嫌だって言ったけど、『どうしても募集してらっしゃるから行ってくれない』と。で、行ったのが天文館の南天美容室だったんです」

美容師免許を取ったのは71年前、20歳の時でした。美容院で見習いとして働きはじめて数年。一人前になった20代後半に、再び転機が訪れます。父親が信用金庫に勤める常連客から独立を勧められたのです。

(山野さん)
「お客さんから『開業しない?』と。開業したら(開業の段取りを)するから(信用金庫に勤めている)お父さんに相談しなさいと」

当初、天文館での開業を夢見ていた山野さんでしたが、紹介された土地は上本町でした。しかし、そこは偶然にも空襲で亡くなった父親の遺品が見つかったすぐ近くでした。

(山野さん)
「私は天文館で開業したかった。何でここにするんですかって聞いたら、『山野さん、ここにね、あんたの使命があるのかもよ』って」

1959年、28歳の時に「やまの美容室」を開業。長年にわたって店を切り盛りしてきましたが、いまは常連客に限って営業しています。客も山野さんとほとんど同世代です。

(山野ハツエさん)
「90歳、100何歳とか。(Q.平均年齢が高いお店ですね)そう(笑)」

この日やってきた常連客は、50年以上通う、80歳の松野佳代子さんです。

(松野佳代子さん)
「(ハツエさんの美容室に通い始めたのが)20代の頃からですから。家族的な雰囲気ですよね。ちょっとしたらお茶を出してもらって、皆さんここで和やかに話してらっしゃいます」

(山野ハツエさん)
「お茶は出します。せっかくいらしたんですから」

山野さんを陰で支えるのが、妹の古別府久子さん(86)。40年近く一緒に暮らしています。姉のことを愛情たっぷりにこう言います。

(妹・久子さん)
「勝気な人ですよ。言ったら聞かないですね、困ったもんですよ」

90歳の山野さんが現役の美容師としていられる源は、久子さんが作る毎日の食事です。

(妹・久子さん)
「頑張ってくれてますから。張り切って、おいしいものでも食べさせようかなって。こんなに年取ってるのに、よう食べるなと思う」

(山野さん)
「よく食べます。なんでも食べます」

閉店を考えたこともある山野さんですが、客の「ある言葉」で続けることを決意しました。

 

(山野さん)
「お得意さんから『私が生きている間は、店を開けとって。行くところがないから』と。じゃあ、お茶飲みの場所にしましょうねって。それで今やっています。おかげさまでね」

店に通うのを楽しみにしている人たちのために、山野さんは笑顔とおもてなしで、これからも店を続けます。