桜島大正噴火から107年
107年前のきょう発生し、噴出量が20世紀国内最大となった桜島の大正噴火から大規模噴火への備えについて考えます。牛島記者の報告です。
107年前の大正3年=1914年1月12日に、桜島の西側と東側の2か所の山腹で始まった大正噴火。噴煙の高さ2万メートル、火山灰や溶岩などの噴出量は最近の噴火の10万倍規模、20世紀国内最大のおよそ30億トンとみられます。
桜島では数日前から地震などの前兆現象が起きていて住民の多くは桜島の外に避難していましたが、噴火開始からおよそ8時間後にマグニチュード7.1の地震が発生し、市街地側でも土砂崩れや建物の倒壊が相次いだこともあり、58人が犠牲になりました。
井口正人教授「こういう風に下に降りてきているところが大正3年の時の火口で、まさにここの場所というのが松林になっていて全く分からなくなっているが、ここも溶岩地なんです。」
大正噴火から107年。桜島ではその後も活発な活動が続いているものの、大正噴火に匹敵するいわゆる大規模噴火は起きていません。
ただ、桜島の活動を研究する京都大学の井口正人教授は、桜島にマグマを供給しているとみられる鹿児島湾北部の姶良カルデラでは、マグマの蓄積が進んでいて、いつ大規模噴火が起きてもおかしくない状態にあると指摘します。
井口正人教授「マグマの蓄積量からみて、大正噴火級の噴火を起こすぐらいのマグマはすでに蓄えられている。今後、実際に噴火が起こるまで何年かかるかの予測は非常に難しいが、何年かかるかは分からないが必ず大規模な噴火は起こると思っている」
大正級の大規模噴火に備え、鹿児島市では1971年から毎年、総合防災訓練を続けています。
去年11月に行われた桜島の住民を対象にした訓練では、想定される行政や町内会などの動きを事前に時系列に沿ってまとめた「タイムライン」が初めて使われ、要支援者を把握するために町内会長や消防団が開く調整会議に初めて民生委員が参加するなどの取り組みも行われました。
鹿児島市危機管理課 児玉博史課長「要支援者に詳しいのは地元の人なので、犠牲者ゼロを本当の意味で目指すためには、要支援の人に手が届く体制づくりのためには地元の協力をええることが大事になる」
桜島では半世紀にわたって訓練が続けられていますが、大規模噴火の際には訓練があまり行われていない市街地側でも大きな被害が想定されています。
鹿児島大学地震火山地域防災センター 中谷剛特任研究員「火山の被害は島内で完結すると思っているとしたら危険。社会的に影響が出る範囲でいうと、少なくとも100キロは風に乗って灰が流れていくと思う」
これは去年の桜島上空の風向きや風の強さをもとに予測した大正噴火級の噴火が起きた場合の降灰のシミュレーションです。
最も被害が大きいケースでは、鹿児島中央駅付近で最大105センチの灰が降ると予想されています。
木造住宅は45センチの降灰で倒壊するおそれがあるとされますが、その倍以上が降る予想で、交通やライフラインなどにも深刻な被害が出るとみられます。
中谷特任研究員「水害だろうと噴火だろうと、災害の種類で(個人の)防災対策が分かれるわけではない。水は日頃から少し保存しておく、少し保存食を準備しておくなど、これを改めて防災対策だと意識しなくていいと思うんですよね。日常の生活の中でそういう(身近な)対策を進めていくことを考えるべき」
今月9日、市街地側の城西中学校で行われた避難所の運営訓練では、避難対象となる周辺の住民60人が初めて参加しました。
市街地側の町内会長「私たちが逃げる立場になった時のことを少し懸念している。そのときに町内会の役員として誰が何をするのか(検討するのが)これからの課題」
児玉課長「ライフラインなど全般で市民の生活に混乱が生じることも十分考えられる、(市街地の被害も)想定して広域避難も伝えていければなと思っている」
専門家は、過去の桜島の活動から学び被害をイメージしておくことが大切だと指摘します。
井口教授「大正級の大規模な噴火でどういう被害が起きたのか、一体どうなるのかを良く知るということ。現代社会に当てはめて、一体どういうことになるのかということを頭の中で少しでも想像してみる。想像力を掻き立てて考えておくということは、将来(噴火が起きた時に)役にたつ」
いつ起きるか分からない大規模噴火に備え、いつでもスイッチを入れられるよう準備しておくことが大切です。