島料理研究家で奄美市文化財保護審議会 会長の泉和子さんです。
泉さんはどのようなお正月をお過ごしでしょうか?
泉さん:家族礼装の奄美の伝統行事、三献(さんごん)をして、年神様をお迎えしております。
やはり奄美といえば、三献ですよね。泉さんは元々奄美のご出身なんですか。
泉さん:はいそうです。奄美市、旧名瀬市の生まれです。
島料理研究家として、島料理を大切にしていこうと思われたきっかけってどんなところからだったんですか。
泉さん:古い「南東雑話」っていう文献があるんですけど。それを見ていたときですね、今伝えられていない料理がたくさんあるなっていうことに気づいたんですね。それで、若い方にもわかるようなレシピ、島料理は元々目分量で作るので、レシピがないんです。一つ一つ自分なりのレシピを作っていこうということで作っていきましたら、1冊の本になりまして、「心を伝える奄美の伝統料理」っていう本を出させていただきました。
奄美の伝統料理、「南東雑話」というこの文献は、江戸時代の文献ですよね。江戸時代には普通にあったものが、もう今では作られていなかったものを泉さんが再現してみようと。
泉さん:そうですね。まだまだあると思います。
奄美のお正月と言いますと、三献ですよね。改めて三献について教えていただけますか。
泉さん:献っていう字は酒盃、酒をすすめるっていう意味らしいんですけど。三献なので1の膳が吸い物なんですね。吸い物が2つなんですけど、1の膳は奄美では黒いお椀に餅のお吸い物を作ります。2の膳がお刺身で、3の膳は鶏肉か豚肉のお吸い物なんですね。
地域や家庭によって中身、具材が違うんですけど、お祝いとかお正月は奇数の具材を入れます。3つ5つ7品ですね。それを1の膳、2の膳、3の膳って出すんですけど、その前にですね、最初、焼酎ですね、お酒を出して、その後に盛り塩、盛り塩に昆布かスルメ。
昔は干魚だったんですけど、それに塩をつけていただきます。それから1の膳のお吸い物がまわって、その次にまたお酒がまわります。
一家の長が、お酒を回すんですけど、年長の長男、次男、長女、次女というふうにこう年長から並ぶんですね。
2の膳が終わりましたら、またお酒がまわって、次3の膳のお吸い物がまわります。そして、終わるんですけど、最初いただく前に家長が、方言でですね、「御精霊」と言うんですね、どうぞ召し上がりくださいっていう意味の方言です。
これは北大島の方言ですが、南大島はうい精霊って方言がちょっと違いますね。地域によって方言がもちろん違いますので、その言い方も違ってくると思います。
その準備というのは、いつごろから準備をされるんですか。
泉さん:正月料理は年越しのわんほね料理から正月料理にはいるので、その正月料理には、つば、つばしゃって、方言で言いますけど、あのツワブキだったり、その地域によってはアザミっていうのも使うので、自然食材を採るところから始めます。だから、つばしゃをですね、採って皮をむいてアクを抜く作業から行うので、だいぶ早めから始まると思います。
わんほねというあのお料理、これはいわゆる豚の骨で豚骨のことですよね。
泉さん:そうです。わんほねやせって言うんですけど、わんほねは豚の骨でやせが野菜ですね。豚骨野菜ってことになります。本土の方では蕎麦を食べますが、奄美ではわんほねやせを食べて年越しをします、わんほねやせからがお正月料理に入るので、あの準備はもう大変ですね。昔の人は本当大変だったと思います。
今はね、ちょうど食材を売っているお店があるので、自分でできない方は、あのお店で買ったりしています。
冬におすすめの、奄美ならではの料理というのはありますか。
泉さん:正月料理に使う「コーシャマン」ですね。ダイショっていう山芋なんですけど、赤いコーシャ、ハーコーシャとシルコーシャっていうのがありまして、赤いコーシャマンと白いコーシャマンがあるんですけど、正月料理はめでたいので、だいたい赤いコーシャマンを使いますけど、それを塩茹でにして、丼とかお皿にコーシャマンとか、あのジマメとか、わんほねとかを盛って出すんですね。その他に、三献があるわけです、料理は。
泉さん:正月料理に使うコーシャマン、それから葉にんにくですよね、にんにくの塊を。
葉にんにく。
泉さん:丸い球根の方ではなくて、その葉っぱのところが、こちらは食べます。その葉にんにくがちょうど今出て、出始めです。これもフルイキっていって、豚とその葉にんにくを炒めた豚のフルイキって料理があるんです。すき焼きみたいな料理です。それに使うとか。
スタミナがつきそうな感じですね。
泉さん:そうですね。本当に元気になりますよ。
本当にまだまだ知らないお料理いっぱいあるんですね。
泉さん:今年は椎の実が豊富です。お味噌にしたりとか、いっぱい椎の実を使った料理もあるので今の時代は、おせんべい屋さんがあります。これからクッキーとか焼き菓子類にもこういったしいの実の利用も、大切な先人が残した資源なので使っていただきたいなと思っています。
本当に先人の知恵というのは、まだまだこれからも発掘しがいがあると思いますけれども、今後の夢や目標などはございますか。
泉さん:市街地がコンビニとか料理がファストフードの店とかたくさん出てきましたので、次の世代に家庭における伝統行事の継承、そして島料理のレシピだけではなくて、先人たちが伝えてきた、自然食材の利用などの自然との関わり方とか食文化の心も添えて伝えていきたいと思っています。
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