落語家の林家彦いちさんです。
鹿児島出身の彦いちさん。奄美大島・加計呂麻島での思い出の風景を話していただきました。
(東京暮らしも長いのでは?)
(林家彦いちさん)「31(年)とか32とか、長い。鹿児島よりも長くなって、結構経っている、言われて気が付きましたね。長いな」
鹿児島出身の落語家、林家彦いちさん。アウトドア好きとしても知られ、世界各地を旅しています。
(あちこち出かけていますけれどもその中に鹿児島も入っていますか?)「鹿児島は東京を出てからの方が、遊びに行っていますね、島々は特にそうですね、高校まで僕、鹿児島に居たんですけれども、その間行かないんですよね、高校時代って、高校時代に奄美大島に遊びに行かないじゃないですか。そんな優雅な高校生活はしていなかったので。噺家になってからですね、改めて鹿児島の楽しいところを知ってしまったという感じです、屋久島もそうですし」
いまも彦いちさんの記憶に残っている奄美の風景。それは、噺家仲間と一緒に、加計呂麻島で釣りをしているときのこと。
「加計呂麻の内海でずっと釣りをしていたんですけれども、ただ、外海の方になんていうんですかね、ウチミヤツゾウにぐるっとまわったらデカイのが、釣れる釣れる、潮が引いたときに。
それで籠をしょったじいさんが、割れ目からちょんちょんってやって、あれヒイラギかな、なんだろうな小さな魚をちょんと釣っては籠に入れそれがすごいかっこいいのよ。
ただ潮がひいてるちょっとの瞬間だけなので、そこで夢中になっているとだんだんだんだんと潮が満ちてくるので、早めに引き上げなきゃいけない、じいさんは危ないぞとか言うわけですよ。
本当にそのじいさんは籠に自分の今日食べるだけの、だけのって言うとあれですけれども、明日また来るのかも分からないですけれども、それがかっこよくて、それで僕らは最後まで釣っていて、あがって車に乗って悪路をガタガタガタってやっているとじいさんが前を歩いてるわけですよ、籠をしょって白いワイシャツが薄汚れで、帽子を被って、農協か何かの帽子ですよ、決してアウトドアのスタイルではないんですけれども、実にかっこよくて、乗せてあげたほうが良いかなとか色々なことを、余計なことを考えるわけですよ。
結構周りが人家の前だったので、横を通り過ぎようとしたらそのじいさんが、振り返ることもせず左手だったから、わっと手を挙げたんですよ、そこに車に乗っていたおじさんたちがかっこいいって言ったんですよね。
何か無駄がないというか、振り返ることもなく、乗っけてあげようかなと思った我々も余計なことだったような気もしたし、かっこいいなって言って僕らは宿に戻るんです内海のほうに戻るんですけれども、そのじいさんの話は今でも出てきますね」
都会暮らしが長くなった彦いちさん。奄美の海の美しさに惹かれたといいます。
「笠利はすごい綺麗でした、びっくりしました、沖縄の座間味とかもすごく綺麗ですけれども、なんて言うんでしょうか、トロピカルな感じではない美しさという感じでしたね、やっぱり深くなっている部分とかちょっとゾクっとする、湖のような怖さがありますね」
「人が持っている何か違う能力が、動いている感じが、その時計が動いているという感じがしますよね。それがちょっとさびているなと思うと旅に行ったりしていますね」
「本当にそこにいるとそこの大事なものに気が付かなかったりもすると思うので、本当にじとっとした、本当に50年人が手を付けなかったら植物に覆われるらしいんですね、それくらい力が強いのでそれの力は止められないので、そこと寄り添って生きていく。
要はそこっていうのは自然の、そこを何か壊してしまうと必ずおかしくなるので、そこはそこの人たちの判断ですよね、そこに寄り添って生きていくのが人の正しい姿だと思いますけれどね、はなし家やっておいて何言ってんだという話ですけれどもね。草木に寄り添ってほしいな」