石倉の風合いを描く 補修を手がけた塗装のプロたち

かつて、船着き場だった鹿児島市のウォーターフロントに、趣ある姿をそのまま残す石蔵倉庫。海の玄関口として多くの観光客が訪れる今、この美しい石壁の景観を大切に守ろうと取り組む人たちがいる。

 

鹿児島広告社専務の小手川清洋さんも、その一人。

今年4月、石蔵倉庫を所有する九州共同㈱の社長から、ある相談を受ける。

壁面の補修した箇所の素地がグレーで目立つため、カモフラージュできないかとのこと。

看板事業を手掛ける鹿児島広告社、どうしたら補修箇所を目立たないようにできるか、文字書きをする熟練の技能士と話し合い、良い方法にたどりついた。

ヨーロッパ、チェコのプラハの町に、お城の石壁が陰影をつけたペイントで描かれた“だまし絵”という技法があることから、これをヒントにした。水彩画の“ぼかし”“にじみ”の技法で下地塗りをした後、スポンジ状のタンポで叩くようにして色を重ねる。

単色ではない上、石蔵独特の風合いを出して描くことは難しい。梅雨の時期、雨が降ると塗装作業が出来ないし、さらに数名での同時作業…何十か所とある補修箇所のペイントタッチを合わせることには苦労したという。

ようやく完成したのは7月。出来あがりは、大変喜んでもらえた。

今回、歴史ある建造物の補修塗装という新たな仕事に挑戦した小手川さん。

「色々苦労はあったが、思い入れのあるいい仕事ができた!」と清々しく語った。

職人の皆さんのすばらしい技術によって、鹿児島の文化・歴史や美しい風景は、これからもずっと受け継がれていくだろう。

 

~10月19日(木)10時39分頃『たんぽぽ倶楽部』海童が行く より~

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