■講評 猪俣 凡児 先生(ラジオ「さつま狂句」選者)
今回はこの「道楽」、「釣り道楽」とか「食い道楽」「着物道楽」それから「狂句の道楽」…こういう類の句が非常に多かったです。そのために同想句・同類句がたくさんありましたが、できるだけ視点の違う角度から選をしました。
一番困ったことは、「方言で漢字を読む時には必ずふりがなをつけなければならない」となっているのですが、本人は付けたつもりでおられるのでしょうが抜けていてそのために破調句、あるいは送るべきでない仮名を送ったり、逆に送らなければならない…そういうようなものもあって、佳作とか入選に匹敵する句を落とさなければならないということで、非常に心が痛みました。
■入選
道楽が 何も出来んち 真面目亭主 【押領司 翠里】
(どうらっが ないもでけんち まじめとと)
道楽亭主し 愛想が切れっ 荷を括っ 【坂元 うなっ】
(どらってし あいそがきれっ にをきびっ)
高価け燃油れ 道楽車は 車庫け寝せっ 【内野 茶柱】
(たけあぶれ どらっぐいまは しゃけねせっ)
食っとが 道楽女子会や バイキング 【川畑 光ちゃん】
(たもっとが どらっじょしかや バイキング)
句作いな 銭もかからん 良か道楽 【池江 蹴平】
(くづくいな ぜんもかからん よかどらっ)
多え道楽 女房が支えた 五十年 【八重尾 乙姫】
(うえどらっ かかがささえた ごじゅうねん)
倹し女房 亭主ん道楽にゃ 目ば瞑っ 【野中 志野】
(つましかか ととんどらっにゃ めばつぶっ)
いけんすち 嫁っ分かった 道楽者 【八重尾 乙姫】
(いけんすち とつっわかった どらっもん)
付っ合言が 道楽じゃろだい 爺が箸戦 【田之上 セイブン】
(ちっきょちゅが どらっじゃろだい じがなんこ)
釣い道楽 海み撒た遺灰あ 竜宮城 【中道 疾風】
(ついどらっ うみめたいへあ りゅうぐうじょ)
座禅ぬ組ん 道楽きょ得た言が 立ちゃならじ 【松下 ジャンボ】
(ざぜぬくん どらきょえたちゅが たちゃならじ)
若頃ん 道楽が生きた 嫁捜ひけ 【上山 三十一】
(わけころん どらっがいきた よめみひけ)
金貯めが 道楽ち言婆 今日も銀行 【櫨山 一球】
(ぜんためが どらっちゆばば きゅもぎんこ)
仕事ちゃ大概 給料あ足らんが 多け道楽 【保久上 勝手耳】
(しごちゃてげ はれあたらんが うけどらっ)
本業よか 道楽で稼っ 家を建てっ 【塩田 我流】
(ほんぎょよか どらっでかせっ えをたてっ)
倹し亭主 我が道楽にな 使こたくっ 【保久上 勝手耳】
(つましてしゅ わがどらっにな つこたくっ)
着もせんて タンスい寝せた 着物道楽 【吉岡 道場】
(きもせんて タンスいねせた いしょどらっ)
良か腕い 惚れっ嫁たどん 道楽者 【平瀬 芙蓉】
(よかうでい ほれっきたどん どらっもん)
役者ち得 女道楽ば 肥料言っ 【濱川 白馬】
(やっしゃちえ おなごどらっば こやしちゅっ)
道楽が 包丁収集の 女房け怖気っ 【前田 一天】
(どうらっが ほちょしゅうしゅうの かけびびっ)
胸中は良が 何処で違ごたか 道楽き凝っ 【堂脇 天進】
(ねしゅはえが どこでたごたか どらきこっ)
盆栽の 道楽が所帯ん 加勢をしっ 【塩田 我流】
(ぼんさいの どらっがしょてん かせをしっ)
牛道楽 知恵を寄せ合っ 日本一 【井之上 一洋】
(うしどらっ ちえをよせおっ にほんいっ)
食道楽の 口ちも美味まか 母親ん料理 【村田 鹿の子】
(くどらっの くちもうんまか はほんじゅい)
叱ろた爺を 狂句道楽で 揶揄っやっ 【南谷 久瓜】
(くろたじを きょうくどらっで ちょくっやっ)
厳し婆も 別な顔れない 食い道楽 【櫨山 一球】
(いみしばも べっなつれない くいどらっ)
爺ん夢あ 錦江湾の 釣い道楽 【大重 爆笑】
(じんゆめあ きんこうわんの ついどらっ)
焼酎女 道楽が過ぎっ 潰びた店 【平澤 泰山】
(しょちゅおなご どらっがすぎっ つびたみせ)
家計簿も 亭主ん道楽に 打っ止めっ 【疋田 花枝】
(かけいぼも ととんどらっに うっちゃめっ)
釣い道楽 金ぬ食割いな 無か魚拓 【内野 茶柱】
(ついどらっ ぜんぬくわいな なかぎょたっ)
■佳作五
良か道楽 彫った仏像が 高価こ売れっ 【濱川 白馬】
(よかどらっ ほったぶっぞが たこうれっ)
■佳作四
離島め暮れっ 女房かあ励い 釣い道楽 【田之上 セイブン】
(しめくれっ かかかあはまい ついどらっ)
■佳作三
美味もんにゅ 食とが道楽言 肥満えた夫婦 【堀 子鶴】
(うめもんにゅ くとがどらっちゅ こえたみと)
■佳作二
内気亭主が 女道楽く 夢でしっ 【中釜 どんこ】
(いめととが おなごどうらく ゆめでしっ)
■佳作一
凄ぜ道楽 大仏様を 庭うぇ据えっ 【前田 一天】
(わぜどらっ だいぶっさあを にうぇすえっ)
■準特選
書画壺ん 道楽の麓て 小も寝ちょっ 【松下 ジャンボ】
(しょがつぼん どらっのふもて こもねちょっ)
■特選
爺ん道楽 パラグライダで 大空れ舞っ 【有川 八味】
(じんどらっ パラグライダで うぞれもっ)
■番外
湯巡いが 道楽で年中 茹で上がっ 【永谷 勝】
(ゆめぐいが どらっでねんじゅ いであがっ)
仏像彫い 父親の道楽が 座中け邪魔 【山下 矢絣】
(ぶつぞほい チャンのどらっが ざなけじゃま)
■軸吟
呆え頭て 狂句道楽が 活つ入れっ 【猪俣 凡児】
(ぼえびんて きょうくどらっが かついれっ)