■講評 金井 一馬 先生 (テレビ・ラジオ「さつま狂句」選者)
「夕方」…なぜ「よろいもて」などと言うのを出したのかと言われそうですけれども、「よろいもて」はみんなに来ます。「よのいもて」と言う所もありますね。「よのいもて」「よろいもて」どっちでもよいです。その地域で言う言葉で良いのですが、まあ全部「よのいもて」になっていました。
「夕方」になれば皆、何が頭に浮かびますか?やっぱり焼酎なんですね、鹿児島の衆は!?焼酎の句がたくさんあり、私も焼酎の句を作っていました。
■入選 30句
憎きコロナ 素面で帰宅い 夕方 【下野 落椿】
(にきコロナ しらふでもどい よのいもて)
夕方 なれば焼酎虫しゃ 動っ出っ 【上原 清流】
(よのいもて なればしょつむしゃ いごっでっ)
俎板の 音が弾ずじょい 夕方 【有村 秀祭】
(きいばんの おとがはずじょい よのいもて)
よのいもて なれば逝た女房け 泣て語っ 【永栄 寿桃】
(よのいもて なればいたかけ ねてかたっ)
夕方 荷造ゆ始でた 夜逃げ奴 【中道 疾風】
(よのいもて にづくゆしでた よにげわろ)
夕方 散歩あ危険 婆ん下知 【吉元 虎雄】
(よのいもて さんぽああっね ばばんげっ)
亭主し首輪 着けっやろそな 夕方 【濱田 天恵】
(てしくびわ つけっやろそな よのいもて)
夕方 忙がし所い 長げでんわ 【吉元 虎雄】
(よのいもて いそがしとこい なげでんわ)
夕方 禁酒ん亭主しも 喉が鳴っ 【前原 稔】
(よのいもて きんしゅんてしも のどがなっ)
生かされた 今日い御礼を言う 夕方 【有村 秀祭】
(いかされた きょいごれをゆう よのいもて)
上戸さあが 夕方かあ 腰す据えっ 【平澤 泰山】
(じょごさあが よろいもてかあ こすすえっ)
夕方 ネオンが寄れち 手真似しっ 【津曲 とっこ】
(よのいもて ネオンがよれち てまねしっ)
夕方 ないか食せ言て 叫っ豚 【上原 清流】
(よのいもて ないかかせちゅて おらっぶた)
夕方 サンマん匂が 訪とっ来っ 【仁禮 乙女】
(よのいもて サンマんにえが ことっきっ)
夕方て マスクした女房け 良か挨拶 【入来院 彦六】
(よのいもて マスクしたかけ よかえさっ)
女房が逝っ 一段切ね 夕方 【柳村 遊月】
(かかがいっ いっだんせっね よのいもて)
夕方 手招くしでた 赤提灯 【堀 三余】
(よのいもて てまねくしでた あかちょちん)
夕方て 只焼酎ちゅ狙っ 度々来っ 【今村 山姥】
(よのいもて ただじょちゅねろっ はいときっ)
夕方 良か匂を撒っ 女房ん料理 【上田 喜八郎】
(よのいもて よかかざをめっ かかんじゅい)
夕方 焼酎を楽しみ 野良帰い 【有馬 湧声】
(よのいもて しょちゅをたのしみ はいもどい)
日曜大工 焼酎が美味か 夕方 【安田 扇香】
(にちよでっ そつがうんまか よのいもて)
二日酔あ 夕方かあ 元気付っ 【永谷 勝】
(ふっかえぁ よのいもてかあ げんきぢっ)
夕方 ちわいちわいの 赤提灯 【塩田 我流】
(よのいもて ちわいちわいの あかちょちん)
夕方て 温泉で洗れ流げた 昼間の疲れ 【坂元 うなっ】
(よのいもて ゆであれなげた ひいのだれ)
安売いを 夕方知っ 亭主しメール 【松下 ジャンボ】
(やすういを よのいもてしっ てしメール)
焼酎瓶が にじい寄っ来た 夕方 【石野 蟹籠】
(しょつびんが にじいよっきた よのいもっ)
飲ん友達が 布令なし集った 夕方 【前田 一天】
(のんどしが ふれなしよった よのいもて)
夕方 未だあったかち 焼酎ん心配 【上田 喜八郎】
(よのいもて まだあったかち しょちゅんせわ)
仕舞が済ん 喉も鳴っ出た 夕方 【田之上 河童】
(しめがすん のどもなっでた よのいもて)
夕方 帰れち急かす 寺ん鐘 【有川 ヒロシ】
(よのいもて もどれちせかす てらんかね)
■佳作5
夕方 突然訪た客き 狼狽ろ女房 【永井 手毬】
(よのいもて ひょかっきたきゃき たぐろかか)
■佳作4
夕方 鮮魚ぬ貰ろっ 忙こ女房 【疋田 花枝】
(よのいもて ぶえんぬもろっ せしこかか)
■佳作3
よのいもて 割引く狙っ 今日も走っ 【山崎 ちゃんぷっ】
(よのいもて わりびくねろっ きゅもはしっ)
■佳作2
夕方て 幼児あ託児所で 迎え待っ 【藤井 月詠】
(よのいもて こあたくじしょで むかえまっ)
■佳作1
乳が張っ 帰ゆば急っ 夕方 【瀬戸口 湯気】
(ちちがはっ もどゆばいせっ よのいもて)
■準特選
担ね売いの 籠は軽るない 夕方 【平瀬 芙蓉】
(いねういの てごはかるない よのいもて)
■特選
兵糧攻め 女房け詫ぶ入れた 夕方 【濱川 白馬】
(ひょうろぜめ かけわぶいれた よのいもて)
■番外
猫と同等 夕方いな 家い帰っ 【櫨山 一球】
(ねことぐゎい よのいもていな えいもどっ)
夕方て 回覧板と 上がっ飲っ 【猪俣 凡児】
(よのいもて かいらんばんと あがっぬっ)
夕方 隣ぎゃバーベキュん 匂を撒っ 【山下 矢絣】
(よのいもて つぎゃバーベキュん かざをめっ)
■軸吟
二日酔も 夕方てなっ 目が冴えっ 【金井 一馬】
(ふっかえも よのいもてなっ めがさえっ)