■講評 櫨山 一球 さん (昨年の大会優勝者)
「てのん」は、「連れ添う」とか「同伴」という字を書きます。
類想句がかなりあり、似たようなのがありましたが、全く上五・中七・下五…全く一緒だというのが二つありました。面白い発想の句というのがちょっと少なかったのですけれども、先人が「さつま狂句は笑いの郷土文芸」だと昔から言っておられますので、できれば笑いの郷土文芸に沿った発想がやっぱり良いのではないかな…と私は常々思っております。
■入選
インフルが コロナと連立っ きし威張っ 【大重 爆笑】
(インフルが コロナとてのっ きしいばっ)
若け女房と てのん来っ友達す 凄ぜ妬ん 【平田 素麺】
(わけかかと てのんくっどす わぜしょのん)
酔くれ亭主 管巻とてのん 午前様 【塩田 我流】
(えくれとと じじらとてのん ごぜんさあ)
大事じ育えた 牛とてのんで 賞を貰っ 【中道 疾風】
(でじおえた べぶとてのんで しょをもろっ)
てのん来た 泣たい笑るたい 五十年 【小窪 笑福】
(てのんきた ねたいわるたい ごんじゅねん)
よいなこて 娘ごてのん来た 内気な長男 【井之上 一洋】
(よいなこて おごてのんきた いめなすよ)
悪餓鬼が 保護者とてのっ 来ち手紙 【吉岡 道場】
(わるがっが ほごしゃとてのっ けちてがん)
初デート 邪魔じならんごっ てのっ父親 【疋田 花枝】
(はっデート まじならんごっ てのっちゃん)
フルムーン てのん行ったが 帰や別 【柳村 遊月】
(フルムーン てのんじったが もどやべっ)
てのん外出っ 帰いな犬に 引かれっ 【田之上 河童】
(てのんでっ もどいないんに そびかれっ)
やっせんぼ 晩の便所は 婆とてのん 【有村 秀祭】
(やっせんぼ まんのまなかは ばとてのん)
延びた挙式き 赤児もてのん 結婚式 【中野 大八】
(のびたしき あかごもてのん といえしっ)
婚活に てのだ醜青年が 凄ぜ持てっ 【津留見 一徹】
(こんかっに てのだぶにせが わぜもてっ)
狂句大会い てのん来たとに 友人が一等 【上薗 佳笑】
きょうくかい てのんきたとに どしがいっ
生ぶな娘が 良か人じゃっち てのっ来っ 【堀 三余】
(うぶなこが よかひとじゃっち てのっきっ)
喰て飲んで てのだ娘にも 払るわせっ 【津曲 とっこ】
(くてのんで てのだおごにも はるわせっ)
犬と猫 てのん俺をば 迎め出っ 【東中 清流】
(いんとねこ てのんおいをば むけめでっ)
補助金と クーポンてのっ 旅い出っ 【堀 子鶴】
(ほじょきんと クーポンてのっ たびいでっ)
早よ完治っ 飲んけてのもち 嬉し見舞 【津留見 一徹】
(はよゆなっ のんけてのもち うれしみめ)
ど派手女房け てのんだ亭主は 他人顔 【柳村 遊月】
(どはでかけ てのんだととは たにんづら)
老人夫婦 我が子をてのん 米寿祝 【仮屋崎 毅】
(おんじょみと わがこをてのん とかっゆえ)
逝た最初あ 婆とてのじょっ 夢を見っ 【南谷 久里】
(いたはなあ ばばとてのじょっ ゆめをみっ)
てのだなあ 飲ん代や全部 任かされっ 【堀 三余】
(てのだなあ のんだやずるっ まかされっ)
何ゆすいも 真似をきっすい てのだ影 【永谷 勝】
(なゆすいも まねをきっすい てのだかげ)
老夫婦 てのんで買たや 二パック 【池江 蹴平】
(おんじょみと てのんでこたや ふたパック)
逝っ時も てのん行っがち 老夫婦 【平澤 泰山】
(いっとっも てのんじっがち おんじょみと)
届じた野菜 母親ん愛情も てのん来っ 【上田 喜八郎】
(とじたやせ はほんぼんのも てのんきっ)
総入歯が 餅とてのんで どもならじ 【中釜 どんこ】
(がんぶいが もっとてのんで どもならじ)
誕生日 蝋燭きゃ親子で てのん吹っ 【松下 ジャンボ】
(たんじょうび どそきゃおやこで てのんふっ)
故里ん匂ざ 届じた荷物と てのん来っ 【上田 喜八郎】
(さとんかざ とじたにもっと てのんきっ)
■佳作5
喧嘩こてん 今朝もてのんで 病院通い 【田上 河童】
(いさこてん けさもてのんで いしゃがよい)
■佳作4
遺産分け 末子れ位牌へも 付ってのん 【疋田 花枝】
(いさんわけ しったれいへも ちってのん)
■佳作3
グルメよか 五十年てのだ 女房ん料理 【今村 山姥】
(グルメよか ごじゅねんてのだ かかんじゅい)
■佳作2
七五三 てのん親ずい 着物作い 【有村 秀祭】
(しちごさん てのんおやずい いしょづくい)
■佳作1
九官鳥 女房とてのんで 俺ゆば叱っ 【前田 一天】
(きゅうかんちょ かかとてのんで おゆばがっ)
■準特選
嫁っ娘い こいが最後ち 傘をせっ 【南谷 久里】
(とつっこい こいがさいごち かさをせっ)
■特選
首相ん顔れ 閣僚が連立で 泥を塗っ 【大重 爆笑】
(しゅしょんつれ かくりょがてので どろをぬっ)
■番外
何処け行っも 手押しと仲良 てのじょい婆 【猪俣 凡児】
(どけいっも ておしとなかゆ てのじょい婆
てのんとあ よか娘が良か 俺が心根 【山下 矢絣】
(てのんとあ よかおごがよか おいがねしゅ)
初孫を 見いけてのんだ 仲良夫婦 【金井 一馬】
(はっまごを みいけてのんだ なかえみと)
■軸吟
地球は騒動 戦争がてのだ 物価高 【櫨山 一球】
(ちきゅはそど いっさがてのだ ぶっかだか)