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コアラの餌・ユーカリの謎

コアラ…ではなく、コアラが食べる唯一の餌、ユーカリです。
このユーカリに関わる問題で、先日、大阪の動物園のコアラがイギリスに貸し出されることがニュースになりました。
どうして、コアラは貸し出されなければならなかったのか?
また全国で最も多い11頭のコアラを飼育している鹿児島市の平川動物公園では、同じような心配はないのか?取材してきました。


子どもたちに大人気コアラ。
大阪にある天王寺動物園ではコアラ1頭を飼育していましたが、先月、イギリスの動物園に貸し出すことに。その理由の1つが高額な餌代です。なんと年間およそ3200万円!

(平川動物公園コアラ担当 永榮大樹さん)「コアラ1頭、1年間に1000本以上のユーカリが必要になると言われています。」

一方、鹿児島市の平川動物公園では、全国の動物園で最も多い11頭のコアラを飼育しています。平川動物公園でもコアラの餌に高額な費用がかかっているのでしょうか?

ちなみに、草を食べるインドゾウは年間およそ190万円、肉や野菜などを食べるホッキョクグマはおよそ150万円です。

大阪では1頭で3200万円、11頭の鹿児島ではその11倍?


答えは、平川動物公園での餌代は大阪の20分の1以下。

どうしてそんなに違うのか、その秘密は…。

(永榮さん)「天王寺動物園は3200万円が(ユーカリの)輸送費にかかっている。(ユーカリを)自分たちでとりに行けるのでその分、価格は抑えられている。」

天王寺動物園では遠くで育てたユーカリの輸送などで、費用が膨れ上がりました。一方、平川動物公園はというと。

(永榮さん 来園者への解説)「1万2000本を超えるユーカリを近くの山や畑、遠くは種子島や指宿市にも土地を借りて、コアラが365日お腹を空かせることがないようにユーカリから育てている。」

「自給自足」することで大阪の20分の1以下に抑えていました。

鹿児島市内に20か所のほか、指宿市や遠くは種子島まで、県内26か所で、11頭分およそ1万3000本のユーカリを栽培しています。
分散して栽培するのは、台風などの自然災害に見舞われても安定的にユーカリを確保するためです。


 

(岩崎キャスター)「私がいるのは平川動物公園の園内にあるユーカリ畑。一面にたくさんの種類のユーカリが植えられている。あちらでは飼育担当者がユーカリの収穫を自らの手で行っている」

飼育担当者はコアラが好んで食べる新芽の生育状況を見ながら収穫。

ユーカリを自分たちの手で愛情込めて栽培・収穫する自給自足こそが、平川動物公園で全国最多のコアラを飼育することを可能にしています。


今では安定して手に入るユーカリ。しかし、ここまでの道のりは簡単ではなかったと、かつて平川動物公園で獣医として働いていた梶原純一さんは振り返ります。

(平川動物公園 元獣医・梶原純一さん)「この木を見ると昔を思い出す。あっという間の40年。手探りの状態だったが、希望を持ってユーカリの栽培を見守ってきた。その結果が良かったという思いが今の気持ち。」

平川動物公園のユーカリ栽培は1978年に始まりました。

コアラを鹿児島で飼育するため、コアラが初めてオーストラリアからやって来た1984年よりも早くユーカリ栽培に着手しました。
梶原さんはコアラがまだ来ていない中での栽培に心配があったといいます。

(梶原さん)「私もオーストラリアに行って、どこからコアラが来るか分からない状態であちこちの動物園を回ると、地理的な場所によって食べるユーカリの種類が違う。どこからコアラが来るのかとユーカリの成長度との兼ね合いが心配。」

しかし、心配とは裏腹に、試験的にオーストラリアに送った鹿児島のユーカリをコアラが無事に食べたことで来日が実現しました。

平川動物公園が40年以上続けるユーカリ栽培。コアラの数が増えることも見越して来年度には新しい苗2000本を植え、自給自足をさらに充実させることにしています。