舞台芸術の火を消さない マスク着用でオペラ
新型コロナの感染拡大で逆境に立ち向かう人や取り組みを紹介するシリーズ「コロナに負けない!」ちょうど1年前、マスクを着用したままでオペラを上演した声楽家グループの話題を紹介しましたが、今年は、さらに発展した舞台を作り上げました。本番までの準備や関係者の思いを取材しました。
鹿児島市の声楽家グループ「La Operanza」。去年、コロナ禍で舞台が次々と中止となる中、生の芸術舞台の火を消さないため、マスクを着用して歌うというこれまでにない公演を成功させました。
あれから1年、今年はさらに進歩させようとある取り組みの準備を進めていました。
(かごしまジュニアコーラス 外薗ひかるさん)「合唱団としての活動は、毎週ちゃんとあったが、やっぱりホールで歌う機会がないと目標がないっていうのがありました。(今回)広いところで歌えるというのは、私たちもうれしかったです。」
音楽家たちと同様、舞台に立つ機会を奪われた鹿児島市内の児童合唱団とバレエ団の子どもたちにも参加してもらうことに。本格的なオペラに参加できることは子ども達にとって願ってもない経験の場です。
(マネージュバレエ 永吉美花さん)「オペラの方たちと共演できるのは、私たちにとっても光栄なこと。観客のみなさんに喜んでもらえるように心を込めて一生懸命踊りたいです」
そして迎えた本番。席数は6割ほどの256席まで減らし、全席指定。マスク着用や入場時の検温などの感染防止対策に加えてキャストとスタッフ全員は、抗原検査を義務付け、マスクも不織布マスクに統一しました。さらに会場出入口の扉を開くシーンを演出に盛り込み、上演中でも換気を行う工夫を取り入れました。
(ラ・オペランツァ 福冨貴子代表)「(公演は)ちゃんと対策を徹底すればしていいということがあったので、更に徹底することと、生の音楽を絶やさないということをちょっとでもできるということが、みんなの思いを絶やさずにここまでくることができました」
演目は、グリム童話をもとした「ヘンゼルとグレーテル」です。
ヘンゼルとグレーテルが魔女をやっつける勇気ある行動、2人を思う両親の気持ちなど家族愛をテーマにした全3幕の作品を上演しました。
森の中で眠るヘンゼルとグレーテルの夢の中に現れる天使たちがバレエ団のメンバーです。マスクをつけながらでも息苦しさを感じさせない軽やかな踊りを披露。
終盤、森の魔女によってお菓子にされた子どもたちがヘンゼルとグレーテルによってもとに戻るシーンでは。
子どもたちは重要となるシーンで登場し、生き生きと練習の成果を披露しました。新たな挑戦を重ねる出演者の姿に観客からは大きな拍手が送られました。
(マネージュバレエ 永吉美花さん)「ほっとしています。コロナ禍で、踊るのはとても大変ですが、舞台に立てたことは、とてもありがたいことだと感じています」
(かごしまジュニアコーラス 外薗ひかるさん)「歌い終えたことと拍手で興奮状態でした。舞台の上で歌うのが一番気持ちよいですね。」
(ラ・オペランツァ 福冨貴子代表)「こどもたちとの共演も初めてだったんですけど、とても楽しく舞台を楽しんでいただけたかなと。どういう形が一番良いのかというのは、何が正しいのかはまだわからないところですけども、開催できることに喜びと、協力してくださった方に感謝して、これが継続していけるといいなと思います。」
試行錯誤を重ね、去年より一歩進んだ舞台を披露した今回のオペラ。コロナ禍でも可能な限り生の舞台を届けたいと活動する音楽家たちの挑戦は続きます。