• 鹿児島発 コロナに負けない!
  • 新型コロナウイルスの感染拡大は、私たちの生活や経済に暗い影を落としています。一方で、先が見えない不安の中、この逆境に立ち向かう人たちがいます。このシリーズでは、新型コロナに負けまいと頑張っている人や企業などを紹介します。

女性応援 シングルマザーの挑戦

国のまとめでは新型コロナの影響で解雇や雇止めが見込まれる労働者数は、全国で11万人を超え、鹿児島でも1546人となっています。


深刻な状況が続く中で働く女性、特に母親を後押ししようと、自らもシングルマザーである薩摩川内市の居酒屋の女性店長が、取り組みを進めています。
大久保記者の取材です。


薩摩川内市の居酒屋・鹿’tariyan。
店長の上白石悠さんさん(33)です。

店を開いて8年。新型コロナで売り上げが4割減少するなど厳しい状況が続きますが、夢だった料理で人を喜ばせる仕事が生きがいと語ります。

(上白石悠さん)「母も昼は弁当店、夜はスナックで働いているんですけど、そういう姿を見て自分も居酒屋で働きたい(と思った)自分が作ったごはんがおいしいと言ってもらえるとすごくうれしい」

いま上白石さんが気がかりなのは、女性のとりわけ母親の仕事を巡る環境です。
周りでも耳にする厳しい状況に胸を痛めています。

(上白石さん)「(女性が)働きにくくなった。ずっと居酒屋で働いてきているので、夜にお母さんが働けないのは残念。(周囲に)理解してもらえるかなというのが一番」


女性にやさしい社会を目指したい。上白石さんの目線の先にいるのが店員の井上七海さん(18)。

1歳5か月の娘と暮らすシングルマザーです。店の営業時間は午後5時半から深夜0時までですが、負担を減らそうと上白石さんが提案し、この春から夕方までの仕込みを担当しています。

(井上七海さん)「感謝。感謝しかない。周りも新型コロナがあって働けない人も多い」

(上白石さん)「おとなしいけれど手際が良い。早い。妹でもあり、娘にも見えたりたまにする」

あさ娘を保育園に送り、夕方迎えに行けるようになった井上さん。つらかったのは知人らに自分の子育てを批判されたことだったと語ります。

(井上さん)「特に多かったのはSNSで『夜働くのは子どもがかわいそう』と言われた。精神的にきついですよね、言葉だけでも(ぐさっと)くる」

上白石さんも3年まえ離婚し、現在シングルマザーです。働きながら子育てをする大変さも周囲の厳しさも痛いほどわかります。

(上白石さん)「すごくありました『育児放棄している』って。『ちゃんと見ていないからだよ、親が』っていう冷たいことをいわれたりとか。朝、保育園につれて行って仕入れして仕込みして、保育園に迎えに行って、夜ごはんは店で食べてみんなで、母が子どもを迎えにきてくれる。一生懸命仕事をしているのにという感じでいた」

上白石さんを支える中学3年生の長男と小学5年生の次男です。やってこられたのは2人のおかげと話します。

(上白石さん)「活力の源です。どんなことでも頑張れます、二人がいたら」

(長男・優雅さん)「兄弟2人で支えていきたい」
(次男・大雅さん)「疲れているときにいっぱい気づかってあげたい」

悠さんの背中を見続けてきた長男の優雅さん。なりたい職業は調理師です。

(優雅さん)「夢は調理師。お母さんと客がいろいろ『おいしい』とか話をしていて、いいなと思った」


この日、上白石さんらが薩摩川内市のレンタルスペースHUBで新たな挑戦に臨みました。

女性5人が中心となって、働く女性を応援する一日限りのレストラン・昭和食堂です。

ランチはテイクアウト含め60人分。ディナーは34人分で完全予約制。県内の農家の女性が作った食材も使われました。

井上さんは長女の虹奈ちゃんを連れてきました。ほかのスタッフが面倒を見ます。

働く女性にエールを送りたい。立ち上げから上白石さんらをサポートしてきたHUBの上水樽洋平さん。

「(上白石さんが)子どもを育てながらくやしい思いをいっぱいしていた。このチャレンジキッチン(昭和食堂)を通して何か解決できないかと投げられたときに、これはやらないといけない(と思った)。一過性だとただのイベント、これがあったから次の何かが生まれてという(今後の)ストーリー性は持っていきたい」

ランチも早々と完売し、ディナーも満席。
(会社員の客)「すごいですよね、前向きで。女性たちが自立できて男性に頼らないで生活できていけるようになったらいい」
(シングルマザーの客)「全部おいしかったです。元気をもらったというか。どんな立場の人でも平等に働きやすく。それが一番かと思います」

成功裏に終わったレストラン。


上白石さんは「すごく達成感はある。女性が表に出て仕事をするというのはすごく輝いている。自分も何かひとつ伝えられることがあったらなと思う。今から(さらに)いろいろ取り組んでやりたい」