鹿児島県知事選 争点 ドルフィン跡地での体育館整備に残る反対論 候補者は?
投開票日まであと4日となった鹿児島県知事選挙。ニューズナウでは、おもな争点について、候補者の主張をお伝えしています。
知事選に立候補しているのは届け出順に、新人で元自民党県議の米丸麻希子さん、新人で元看護師の樋之口里花さん、現職で2期目を目指す塩田康一さんの3人で、いずれも無所属です。
今回のテーマは「県の新たな総合体育館」です。
県がドルフィンポート跡地に計画している新総合体育館は、基本構想から68億円膨らんだ313億円の事業費も議論に上っています。
米丸さんは、場所や規模を見直し財源を子育て支援などに充てる。樋之口さんは、場所や計画を見直し、多額の資金をかけない施設を造る。塩田さんは、2029年の供用開始を目指し、ドルフィンポート跡地での整備を着実に進めるとしています。
(県体操協会 長井忠道会長)
「これが吊り輪ですね。そちらが鉄棒になります。配置してもなかなか(スペースが)厳しい状況」
県体操協会の長井忠道会長です。現在の県体育館での大会では、運営に支障が出ていると言います。
3年前に開かれた小学生の九州大会の写真です。鉄棒と床用のマットの間に、すき間はほとんどなく、通路も確保できない状況です。去年のかごしま国体では広さが基準を満たさず、西原商会アリーナで開かれました。
(県体操協会 長井忠道会長)
「器具と器具の間隔は、安全性を考えたときに配慮しなければいけないが、現状ではなかなか厳しい状況」
1960年に完成した県体育館。バレーコートが2面とれるフロア面積は、当時、国内有数の広さでしたが、60年以上たった現在は、全国的に見ても小規模な体育館となり、雨漏りやひび割れなど老朽化も問題に。また、競技スペースが確保できず大会に時間がかかるほか、複数会場での分散開催などを余儀なくされています。
こうしたことから、県は2年前、新たな総合体育館をドルフィンポート跡地に整備する基本構想を県議会の了承を経て策定しました。
メインアリーナのフロア面積は現在のおよそ2.5倍に増え、観客席は国際大会もできるよう、およそ1700席から8000席以上に。県は2029年の供用開始をめざしていて、長井さんら屋内スポーツ競技団体は早急な建設を求めています。
(県体操協会 長井忠道会長)
「これまで(候補地が)二転三転してきたので、ようやく建設されるかなというところまで来ている。ぜひスムーズな形で体育館が建設されればと願っている」
しかし、いま、体育館整備が再び争点化しています。議論になっているのは、建設の是非ではなく、「建設場所」です。
(建築家 政所顕吾さん)
「桜島の眺望がひらける一等地に、大きいものを建てるのは、肌感覚として抵抗があるのではないか」
鹿児島市の建築家、政所顕吾さんです。ドルフィンポート跡地での体育館整備に反対しています。
去年、ドルフィンポート跡地を含めた本港区全体の利活用について県が募ったアイデア募集に応募。検討委員会でプレゼンテーションを行う7組の1人に選ばれました。
県は、緑地帯の「ウォーターフロントパーク」を残したうえで、ドルフィンポート跡地に、高さ30メートル以下の体育館と多目的広場を整備する計画ですが、プレゼンした7組のうち政所さんを含む少なくとも4組は、ドルフィンポート跡地での体育館整備に否定的でした。
政所さんは、県がこうした反対意見に十分向き合わないまま、今年3月に本港区のコンセプトプランを策定したことが、議論が続く背景にあると考えています。
(建築家 政所顕吾さん)
「そもそも論として、ドルフィンポート跡地のあるべき姿は議論されていなかった。この問題は県民がもっと納得する形での決着をしないといけない問題だし、そのためにはもっと時間をかけても構わない。かけるべき」
新体育館について、街の人は。
(鹿児島市・無職80代)
「賛成です。ほかの代わりの土地を探すけどないから」
(鹿児島市・非常勤国家公務員70代)
「あそこには建設すべきではない。景観と防災の関係。桜島とか地震」
(鹿児島市・飲食店勤務60代)
「できても良い。活性化する。大人も子どもも施設があれば活用できる」
(鹿児島市・アルバイト60代)
「景観は宝物だから。すごくそこは気になる」
資材の高騰などで、事業費が当初の245億円から313億円に膨らむ中、候補者の主張が割れています。
(米丸麻希子候補)
「当然反対です。鹿児島人にとって桜島は一つの象徴でありシンボル。そこをふさいでしまう。国体は大きな体育館がないとと、急がないといけないと言っていたが、結局、各地で上手にばらけて、各地で盛り上がった。本当に大きな体育館が必要なのか。8千人が大きいのか小さいのか。そこも議論の余地がある」
(樋之口里花候補)
「ドルフィンポート跡地につくることは反対。建設費も膨張してきているし、景観や規模の問題もある。もう一度、より多くの県民が納得する形で進めるべき。
今の時点で場所がどこが良いとかいくらが予算は、軽々には言えない。313億円が適切かということについても、規模と絡んでくる問題だと思うので、そこも見直しが必要」
(塩田康一候補)
「県大会、全国大会を開催する上で、必要最小限の規模で整備する前提で313億円になった。場所を移しても整備費用、あるいは15年間の運営費も含めてのことなので、これは変わらない。見直すのであれば、どれくらいの規模のものをいくらでどこに整備をするか、具体的な話がないと」
整備計画が動き出す一方で、依然、収まらない反対の声。県の総合体育館をどうするのか?有権者の判断が注目されます。