• かごしま未来図鑑
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錦江湾で塩作り 環境問題伝える 黒江学さん

きょうは、錦江湾の海水を使った塩作りを通して、子どもたちに環境の大切さを伝えている姶良市の黒江学さんです。

カラフルなポロシャツに頭には「塩」と書かれた鉢巻。この派手な格好をしているのは、姶良市で、錦江湾の海水を使って塩作りをする黒江学さん(39)です。

(黒江学さん)「本当に20秒、30秒の世界で、やはり自分を売り込まないといけないとなったときに、だったらちょっと面白いのを作ろうかなというノリでつくったら、こんな風になった」


黒江さんは、3年前から、姶良市の自宅を改装した工房で、塩作りを行っています。
黒江さんが塩作りに使うのは、姶良市と鹿児島市境の海岸で、汲んだ錦江湾の海水です。

(黒江学さん)「鹿児島というと桜島、錦江湾て思い出の場所だと思うけど、その思い出の場所で取れた塩というのが、食べられるということがすごくうれしいかなと思って」

1000リットルの海水を直径およそ1メートルの鉄鍋で、3日から4日かけてじっくり煮込み、ろ過を繰り返すと、およそ30キロの塩ができます。


黒江さんは、生まれも・育ちも姶良市。
若い頃は、サーフィンやシーカヤックなどマリンスポーツに熱中しました。
会社勤めをしていましたが、4年前、母・須那子さんの病気をきっかけに脱サラし、塩作りを始めました。

独学で始めた塩作りでしたが、なかなか白い塩を作れなかったと言います。
そこで甑島で塩作りをする職人のもとに通って、ようやく白い塩を作る技術を身につけました。完成した塩の名前は、「錦江湾にしきの塩」。
錦江湾の錦と「ふるさとに錦を飾りたい」という思いを込めました。


まだ塩作り1本で食べていけない黒江さん。姶良市内の居酒屋で、アルバイトしながら生計を立てています。そして、刺身の付け塩などに「にしきの塩」を使ってもらっています。

(店主・有村隆太さん)「みんなおいしいって言ってますよ。これから先が楽しみな人間なんで、自分も負けないようについていこうと思っている」
(常連客)「深みがある。口の中で塩の香りが広がるというか」


塩作りの合間には塩を取り扱ってくれる店を開拓しています。
そのひとつが、去年偶然立ち寄った霧島市牧園町の「きりん商店」です。
店主の杉川さんは、黒江さんの人柄に触れ、会ったその日に、店で「にしきの塩」を販売ことを決めました。

(きりん商店・杉川明寛さん)「話した感じで、この人、ちゃんと」塩を作っているな。この人だったら大丈夫という安心感がありました」


海の水で塩作りをする黒江さんが意識するのは未来の鹿児島の環境です。
100年後も、塩の作れる「美しい自然を残したい」という思いから小学校などで、塩作りをしながら環境問題を考える出前授業を行っています。

黒江さんが塩作りに飛び込むきっかけとなった母・須那子さんは、塩の完成を見届けることなく3年前に他界しました。
黒江さんは、塩作りと向き合いながら今を大切に生きることを考え続けています。

(黒江学さん)「僕が心がけているのが、その瞬間瞬間を全力で生きたいなと。これをやることによって、環境への意識も高まるし、錦江湾に正面から向き合っている人の励みになる。やっぱり100年後、自慢できる鹿児島になって欲しいという思いがあります」

後枠黒江さんの作った「にしきの塩」は、現在、鹿児島市の桜島ミュージアムや姶良市の重富なぎさミュージアムなど県内10箇所で購入できます。
近いうちにネット販売も始めるそうです。