新燃岳 噴火

きょうは、本格的なマグマ噴火の発生からあすで8年となる、霧島連山の新燃岳についてです。

昭和から平成にかけての主な噴火をまとめました。

60年前、昭和34年に水蒸気噴火がありました。その32年後、平成3年から4年にかけて噴火があり平成20年と平成22年にも噴火しました。
そして、平成23年1月26日、およそ300年ぶりとされる本格的なマグマ噴火が発生。さらに、おととし、去年と噴火が相次いでいます。このように見ますと平成の後半に活発化している新燃岳ですが、噴火の推移や地元への影響などを振り返り、これからの備えなどを考えます。


平成3年11月の新燃岳頂上です。当時は、火口の縁まで行くことができ火口内の湖を間近に見下ろすことができました。

平成の時代、新燃岳の活動、姿は大きく変わりました。
平成3年12月から翌年の4月にかけて、新燃岳では小規模な水蒸気噴火が4回相次ぎました。
その後、16年間、噴火はありませんでしたが平成20年と平成22年に噴火が発生しました。

平成23年1月26日。およそ300年ぶりとされる本格的なマグマ噴火が起きました。

噴煙は、火口から7000メートルの高さに達し、火砕流も発生。風下の宮崎県側には、多量の軽石や火山灰が降り車のガラスが割れるなどの被害が出ました。

この噴火の6日後には…。

空振・空気の振動でホテル、住宅などおよそ100か所の窓ガラスが割れ、けが人も出ました。
また、直径数十センチの噴石が火口から3キロ以上離れた山林に落下しました。

鹿児島大学の井村隆介准教授は、「火山学的にもかなり大きな噴火だった」と話します。


(井村准教授)「江戸時代以来300年ぶりの噴火と言われるが、1716年以来の本格的噴火。桜島の1年分の10倍。10年分くらいの噴出物が一気に出た。火山学的に見てもかなり大きな噴火」


霧島の観光も大打撃を受けました。霧島市牧園町のホテルの総支配人で霧島温泉旅館協会の会長も務める中尾哲夫さんはこう振り返ります。

(中尾会長)「閑古鳥が鳴くと言ったらおかしいけど、宿泊のお客様はほとんど無いような状態。まずはお客様に戻ってきて頂く為にはどうするかという事をいろいろ考えていろんな施策を打って出た。でも、やっぱり1年くらいは大変だった」

噴火前、霧島市の年間宿泊客数は100万人を超えていましたが平成23年は89万人あまりに落ち込みました。
全国への情報発信など関係者の懸命な努力で平成24年には100万人を回復しました。しかし、客の落ち込みに耐えられなかった一部の宿泊施設は閉鎖に追い込まれました。

また、平成元年に開園したレジャー施設、「霧島高原まほろばの里」も今月末で閉園するなど影響は、今も、残っています。

霧島の年間宿泊客数は平成26年以降、100万人を割り込みおととしはおよそ93万9000人でした。

平成23年の噴火活動は9月まで続きました。

その後、しばらく噴火がありませんでしたがおととし10月、およそ6年ぶりに噴火。
去年3月以降も噴火が相次ぎ、溶岩が火口の外に流れ出しました。

霧島の観光は8年前の噴火のときのように風評被害に悩まされたといいます。

(中尾会長)「去年で言うと3月に新燃岳が噴火して、併せて4月に硫黄山が噴火したということもあって、前回同様、一時は風評被害で宿泊客が大幅に減った。見る方からすると大変な噴火だと取られる。」

(井村准教授)「霧島の温泉街であれば直接火砕流や溶岩流がやってくることはないと思う。『このあたりは火砕流や溶岩流など命を直接奪う火山現象からは離れていますよ。ただし、風下になると桜島のように火山礫が降ることがある』ということをちゃんと言った上で、リスクはきちんと評価しマネジメントしていく事が大事」


去年6月以降は噴火がなく今月18日、気象庁は噴火警戒レベルを2の「火口周辺規制」から1の「活火山であることに留意」におよそ1年3か月ぶりに引き下げました。

しかし、井村准教授はレベル1で噴火し、死者・行方不明者が63人にのぼった長野と岐阜にまたがる御嶽山を例に、周辺の山に登る場合も警戒を怠らないよう呼びかけています。

(井村准教授)「御嶽山もレベル1で噴火して63人の命が奪われた。今の新燃岳はそれに近い状態。『こないだろう』ではなく『噴火するかもしれない』という気持ちをどこかに置いておくことが大事。」

平成23年の新燃岳の噴火以降、霧島の宿泊施設は、避難マニュアルを作るなどして備えていますが、住民からは、危機意識の低下を心配する声も聞かれます。

「当時と比べて意識が薄れてきている・・」
「避難訓練などはない。定期的にして欲しい」

噴火を繰り返す火山とどう共生していくのか?平成の新燃岳の活動は改めてそれを問いかけました。

(井村准教授)「平成前半にかけて霧島山は非常に静かだったが、どこで噴火が始まってもおかしくない状態が平成後半から始まっている。次の年号の時代も続くだろう。平成の区切りは人間の区切りで自然の区切りではないということを知って欲しい」