知事と平成の県政

昭和の時代に知事を務めたのは、重成格さん、寺園勝志さん、金丸三郎さん、鎌田要人さんです。
そして、平成に入って知事を務めたのが、土屋佳照さん、須賀龍郎さん、伊藤祐一郎さん、現在の三反園訓さんです。

知事たちの姿を通して、平成の県政を振り返ります。


平成元年の知事選で初当選したのが元自治事務次官の土屋佳照さんです。

(土屋佳照知事)「八代~西鹿児島間の建設工事起工式をここに迎えまして、申し上げる言葉もないほどの大きな感慨を覚えます。」

平成3年には九州新幹線鹿児島ルートが本格着工。総工費650億円をかけて新しい県庁舎を建設するなど、ビッグプロジェクトを進めた一方、人と自然の共存というテーマを掲げて屋久島文化村構想を進めるなど、文化事業にも力を入れました。

土屋、須賀、伊藤の三代の知事に仕えた元教育長の原田耕蔵さんです。土屋さんの時代には大きな危機があったと話します。

(元県教育長・原田耕蔵さん)「最大のピンチと言えば、まさに8・6水害だった。知事も竜ヶ水に閉じ込められて、漁船で県庁まで来て、そこで総合指揮にあたる状況だったから。」

平成5年の夏は災害が相次ぎ、復旧対策に追われました。

(土屋知事)「なんとか残せるものなら、残したい。苦渋を重ねてきたのが本当。」
また、甲突川の河川改修に伴って行った石橋の移設保存も大きな論議を呼びました。

平成3年に県議に初当選した県議会議長の柴立鉄彦さんは、当時の土屋さんの状況をこう振り返ります。

(県議会議長・柴立鉄彦さん)「当時の土屋知事も、相当この決断については、夜も眠れない日々があったのではないかと思う。」

(土屋知事年末の庁内放送)「あまりにも足早に過ぎ去った感のあるこの一年は、あれこれと多事多難な年でありました。」

平成7年の年末にこうメッセージを送った土屋さんでしたが、翌平成8年1月に脳梗塞で倒れて入院し、半年後に辞任しました。


その後を受けたのが、須賀龍郎さん。官僚出身の知事が続いてきた中で初の県庁生え抜き知事となりました。

(山中貞則衆議院議員)「ついに知事の座に座った須賀君は、座りべくして座った適任の知事である。県民の手作りの知事である。」

バブル崩壊後の景気対策もあり、九州新幹線部分開業などの高速交通体系の整備、霧島アートの森や上野原縄文の森などの施設整備にも力を尽くしました。

(元県教育長・原田耕蔵さん)「豪放磊落と言うか、まさに決断力の早い、行動力のある知事だった。東京事務所が長かったこともあって、政治の動き、行政の動きの両方とも、全てに精通していた。」

一方、人工島マリンポートかごしまの整備を巡っては、賛否が大きく分かれる中、一貫して推進の立場をとり、着工にこぎつけました。

(県議会議長・柴立鉄彦さん)「あそこができたおかげで、今、クルーズ船も鹿児島にすごく寄るようになった。本当にすばらしい施設ができたと思っている。」

そして…
(須賀知事会見)「もう、ここらあたりで、そろそろいいかなと。」
須賀さんは2期8年で勇退し、56年間の県庁生活に別れを告げました。


平成16年7月、保守分裂となる激しい選挙戦を制し、初当選したのは、元総務官僚の伊藤祐一郎さんでした。

(伊藤祐一郎知事会見)「県民の負託に背くことがないように一生懸命やらせていただきたい」
県は当時、公共事業の拡大などで財政悪化が進み、451億円の財源不足となっていました。伊藤さんは人件費などの削減で財政の立て直しに手腕を発揮し、その後財源不足は解消されました。

(元県教育長・原田耕蔵さん)「一般財源で451億円の財源不足を生じるような、非常に厳しい財政状況の中で、新しい伊藤知事が誕生したわけだが、財源不足の解消という課題については、伊藤知事でなければ解決できなかったと思っている」

そして、福島第一原発事故を受けて原発の安全性を巡る議論が高まる中…

(伊藤知事会見)「諸般の状況を総合的に勘案いたしまして、川内原発1,2号機の再稼働についてはやむをえないと判断いたしました。」
伊藤さんは、新しい規制基準のもとで国内初となる川内原発の再稼働に同意しました。

さらに3期目は、鹿児島~上海線の維持のために税金で県職員1000人を派遣する計画や鹿児島市のドルフィンポート敷地への「スーパーアリーナ」構想を巡る議論などで、反発を受けることも増えました。

そして、平成28年の知事選で県政史上初の4選を目指しましたが…


(三反園知事)「合言葉はチェンジ、鹿児島をチェンジ、お願いします。ありがとうございました。」

元テレビコメンテーターの三反園訓さんが原発政策や観光振興など様々な公約を掲げ初当選。
鹿児島で初めての民間出身の知事として、県政運営が続いています。

平成の間におきた財政緊縮化や人口減少などの変化は、次の時代にさらに進むと見られます。
そうした新たな時代の知事に求められるものとは?

(元県教育長・原田耕蔵さん)「歴代の知事が県勢浮揚発展のために、命がけで頑張ってこられて今がある。これからも、そういう過去のものを検証しながら、また未来に向けて、発展していく鹿児島をつくっていただいたらいいのかと思う。」

(県議会議長・柴立鉄彦さん)「何と言っても県政のトップだから、やはり決断。自分1人の決断だけでなくて、自分が決断したら、それをどういう風に職員の方々が信頼して取り組んでいくかだと思う。」