“焼酎かす”をポリ袋の原料に 高校生の研究がSDGsコンテスト最優秀賞 成功の鍵は「繊維」
鹿児島県内の高校生がSDGsの取り組みやアイデアを発表するコンテストが先月、鹿児島市で開かれました。コンテストに出場した高校生の取り組みを紹介します。
今回は、最優秀賞に輝いた曽於高校。身近な雑草や、焼酎かすを原料にした自然由来のポリ袋をつくる研究に取り組んでいます。
高校生がSDGsの取り組みやアイデアを競う「SDGs Questみらい甲子園」。2回目の今年は、県内の高校64チーム・230人が応募しました。
最優秀賞に選ばれた曽於高校が発表したのが、焼酎をつくる時に廃棄される「焼酎かす」を使ってポリ袋を作るアイデアです。
昼休みの保健室。この日、集まったのは、学校の保健委員会の生徒たちです。2年生の野﨑涼太朗さんと、1年生の新田拓海さん。2人とも部活は科学部で、今回、同じ保健委員会の仲間とともにコンテストに出場しました。
野﨑さんと新田さんが、自然の素材などからポリ袋を作ろうと思い立ったのは、2020年に始まったレジ袋の有料化がきっかけでした。
どうやってポリ袋を作るか考えていた2人。科学部の先生から、ふだん見かける雑草に繊維の素になる物質・セルロースが含まれることを教わりました。
そこで2人は、身近に生えていたシロツメクサからセルロースを取り出し、ポリ袋の原料にすることにしました。しかし…。
(野﨑涼太朗さん)「ずっと研究してきて、できないことが続いて、悶々とした日々を送っていて、ちょっとつらかった」
シロツメクサを薬品に漬けて溶かす時間の調整が難しく、繊維の素になる物質を上手く取り出せません。
5か月が過ぎたある日、薬品に漬けたまま置きっぱなしにしていたシロツメクサを見て、ヒントを得ます。
(野﨑涼太朗さん)「(溶けて)さらさらになっていた。逆に(時間を)短くしたらいいんじゃないかという発想」
これまで失敗のたびにシロツメクサを溶かす時間を長くしてきましたが、化学反応が進みすぎてしまって物質を取り出せませんでした。
そこで、溶かす時間を短くしてみること2週間。シロツメクサから物質を取り出すことに成功。乾燥などの工程を経て、世界で初めて、雑草から繊維のレーヨンを作ることに成功。環境にやさしいポリ袋をつくる第一歩を踏み出しました。
地元の酒造会社・岩川醸造です。焼酎をつくる際に捨てていた「焼酎かす」の処理に悩んでいて、この声が、野﨑さんと新田さんの2人に届きました。
(岩川醸造 中島忠彦室長)「焼酎かすは焼酎を作る際にどうしても出てくるもの。焼酎業界全体が抱える問題」
岩川醸造で廃棄される「焼酎かす」は年間およそ7000キロリットル。処理業者に回収を依頼し、年間で数千万円ものコストがかかっていました。
野﨑さんと新田さんは、シロツメクサで成功した技術を、食物繊維の多い焼酎かすにも応用できないかと考えました。
(岩川醸造 中島忠彦室長)「地元の高校生がこういう課題に取り組んでくれたことがすごくうれしい。曽於市全体のPRにもなった」
今週、「焼酎かす」から繊維をつくりだす新たな挑戦が始まりました。
(新田拓海さん)「下の方に堆積物がたまっている。繊維が入っているなら、雑草も繊維が集まってできているので期待はできる」
自然素材からポリ袋を作りたい、研究は始まったばかりです。
(野﨑涼太朗さん)「高校生が自ら実験をして結果を出して、もっと曽於市の焼酎業界を盛り上げていけるようにがんばりたい」
(新田拓海さん)「焼酎かすがたくさん捨てられてきた現状を、まずはたくさんの人に知ってもらって、その現状を変えるために高校生が活動していることを知ってもらいたい」
2人は全国大会出場をかけて、6月に発表会に臨みます。