補助犬の気持ち 鹿児島には13匹「アーミは体の一部」同伴拒否の現状も…当たり前の社会に
こちらは、1匹は目が不自由な人をサポートする「盲導犬」、もう1匹は耳が不自由な人に必要な音を知らせる「聴導犬」です。
障害者の社会参加が進む中、その暮らしに欠かせない犬たちと鹿児島県内の現状を取材しました。
写真に納まる人気者。10歳の聴導犬アーミです。いちき串木野市出身で、生まれつき耳が聞こえない安藤美紀さん(54)をサポートしています。
大阪で劇団を主宰する安藤さんは、手話を交えた演劇などで聴覚障害への理解を深める活動を続けています。先月、ふるさと鹿児島でも公演しました。
手話も理解しているというアーミ。6年間、一緒に過ごしてきた安藤さんにとって欠かせないパートナーです。聴導犬の役割を伝えるイベントでも大活躍です。
スマートフォンのアラームが鳴ると…
(安藤さん)「アラームが鳴っているところへ誘導します」
日本では、法律で定められた3種類の「補助犬」がいます。厚生労働省によると、アーミのような「聴導犬」は52匹、視覚障害者を誘導する「盲導犬」は836匹、身体障害者をサポートする「介助犬」は58匹います。
県内には13匹の盲導犬が活動していて、聴導犬と介助犬はいません。
(聴導犬ユーザー・安藤美紀さん)「アーミは私の体の一部。私が不安になると、この子も不安になる」
2002年10月に施行された身体障害者補助犬法では、公共施設や交通機関、不特定多数の人が利用する商業施設や飲食店、病院などに対し、補助犬の受け入れを義務付けています。
(マルヤガーデンズ 頴川直樹さん)「安藤さんのイベントがあって社内で確認し、補助犬の受け入れが可能だと知った」
ただ、法律の施行から20年が過ぎましたが、理解が浸透していない現状も。日本盲導犬協会がおととし、全国の盲導犬ユーザー221人に調査したところ、半数近くの100人が同伴の拒否を経験したといいます。
(聴導犬ユーザー・安藤美紀さん)「動物は敏感。自分のことを受け入れる店は分かる」
鹿児島市で暮らす視覚障害者の春田ゆかりさん(53)です。パートナーは4歳のジュノウ。県内に13匹いる盲導犬のうちの1匹で、数か月の訓練を受けた後、2歳の時にやってきました。春田さんにとって4匹目のパートナーです。
(盲導犬ユーザー・春田ゆかりさん)「(店に入ると)最初は『ちょっと待ってください』と止められる」
家ではリラックスした表情を見せるジュノウですが、ハーネスを付けると仕事モードになります。全盲の春田さんにとって、外出は危険と隣り合わせです。
(自宅から出る春田さんとジュノウ)「車が来たね。ライト。グッド」
バスの中でも、足元で待機するよう訓練を受けているジュノウは動じません。
盲導犬を育成しているアイメイト協会や県によると、1匹あたりおよそ200万円をかけて訓練を受けた後、早ければ2歳ごろから希望するユーザーのもとで一緒に暮らし生活を支えます。長ければ10歳まで働いた後、別の家族などに引き取られ余生を過ごします。
この日、春田さんは天文館で友人と合流し、ランチを楽しむことにしました。予約をせずに入った飲食店では…
「いらっしゃいませ。盲導犬?どうぞ」
ジュノウも一緒に店の中へ。食事が終わるまでテーブルの下で待ちます。
(飲食店の店員)「そんなに違和感はない。賢いし」
(春田さん)「ダメかなって最初は思った」
(春田さんの友人)「いいですよと言っても外側だったり、離れたところだったり。どこでもどうぞ、というのはなかなかない」
この日、立ち寄った場所のすべてが、ジュノウを受け入れてくれました。
(春田さん)「乗車しようとしたタクシーが(盲導犬を)乗せなくて。運転手さん同士でけんかになったことが以前あった」
(タクシー運転手)「小型犬はケージに入れないと難しいが、盲導犬となると対応は変わってくる」
(春田さん)「運転手さんはよく勉強されている」
盲導犬への理解が進みつつあるのを感じているものの、その存在が当たり前になってほしいと願っています。
(盲導犬ユーザー・春田ゆかりさん)「自立という意味でも盲導犬と二人で出かける方がいい。盲導犬が来て当たり前だと見てもらえるような社会をつくれたらいい」
街で補助犬を見かけたら、どう接したらいいのでしょうか。補助犬がサポートに集中できるよう話しかけたり、見つめたり、勝手に触ったりしないようにしましょう。