新たに「サラダ」や「地魚」まで 広がるサブスク…地域課題解決に期待も

定額の料金を支払えば、モノやサービスを一定期間利用できるサブスクリプション、いわゆる「サブスク」。インターネット上のサービスだけでなく、様々な分野に広がっています。
鹿児島では新たにサラダや魚のサブスクも登場。進化を続けるサブスクの世界を取材しました。


7月にオープンした鹿児島市のサラダ専門店「VEGE&ME」。県内の契約農家から仕入れた旬の野菜を中心に、定番8種類、季節限定2種類のサラダを主に販売しています。

こちらは「SEGODON」。手作りのローストポークや、県内産の卵、じゃこ、さつまいも、にんじん。具だくさんで食べ応えのあるメニューです。

野菜を小さくカットした「チョップドサラダ」。トッピングは10種類以上あり、その珍しさから人気を呼び、2か月間で3000個を売り上げました。

(初来店)「めちゃくちゃおいしそう。彩りもめちゃくちゃ良くて」

(初来店)「自分で作るとなると材料をそろえるのも大変なので、たまにはいいかなと思って来てみた」

(常連)「カット野菜を食べている感覚と全然違うので、地域のインフラなのでなくなったら困る」

(記者)「こちらのサラダ店が始めたのが、サラダのサブスクです」

1か月8640円で1日サラダ1つ、1万2960円で1日サラダ2つまで買える2種類があります。単品価格は、1つ890円。毎日利用すれば、10日から2週間で単品で購入するよりお得になります。

(サブスク利用者)「サブスクしてから毎日(来ている)。野菜をすぐ腐らせてしまうので、毎日考えずに買えるのは魅力的」

社長の樺山周作さん、29歳。農家や市場から仕入れた野菜の宅配サービスを営むなかで、県産野菜を手軽に食べられる機会を作りたいと、今月から始めたのが、サラダのサブスクでした。少しの傷があるなど規格外も活用しています。

(樺山さん)「味には問題がないが、規格外のものは生産者の中では一つの問題で、もっと農家さんの力になれるかなと」

サブスクのスタートからおよそ2週間。健康意識の高まりや、現在の物価高などを背景に、想定を上回る人気ぶりだといいます。

(樺山社長)「サラダを家で作るとなると一個ずつ(野菜を)そろえていると結構な値段になる。ちょっとした手助けにもなっているのかなと今は感じている」

一方、ちょっと変わったサブスクは、漁業の世界でも。
肝付町の内之浦漁港で定置網漁をしている昌徳丸。今の時期は、ハガツオやマアジなどが旬を迎えています。

しかし、漁から戻った漁師が手に取っているのは、あまり馴染みのない魚ばかり。

(漁師たち)「これ、おいしいよね、塩焼きもおいしいし、バター焼きも。煮つけも」「これはタイのよう。きれいな白身、煮つけが合う」

これらは「未利用魚」や「低利用魚」と呼ばれる魚たち。1日の水揚げ量のおよそ5%、20キロから30キロほどが網にかかりますが、認知度が低いことや漁獲量が安定しないことなどから多くが廃棄されています。

漁師歴18年以上の柳川拓哉さん(39)は、こうした未利用魚を、地元の魚=「ロコフィッシュ」として広めていきたいと、「魚のサブスク」に向けて準備を進めています。

(昌徳丸 柳川拓哉船長)「(一般の人が)今まで知らない、見たことのない魚を食べてもらうことで、魚の価値を上げていく。いろいろな人に内之浦の魚を食べてほしい、おいしいと思ってほしい」

月額4550円で下処理を済ませたロコフィッシュ7種類の詰め合わせを配送する計画で、未利用魚は獲れる量や種類が予測できないため、月末までの注文で、翌月末以降の配送となります。

下処理を担うのは、サブスクに賛同した鹿屋市の鮮魚店です。

「今回は焼き用・煮つけ用にぶつ切りにして。血合いをきれいに取っておけば保存がきく」

ギンカガミは、焼き物・煮物用に。衣をつけたシュモクザメは、ぶつ切りにして唐揚げ用に加工するなど、魚のプロ目線で簡単においしく食べられる方法を提案しています。

(出水田鮮魚 出水田一生常務)「処理が面倒だとか、何かしら理由があって出回っていないが、食べればおいしい魚」

県内の漁業就業者は2018年は6116人で、1988年からの30年間で、6割近く減少しました。

近く正式スタートさせようと準備が進む魚のサブスク。地元の魚=ロコフィッシュの豊かさを伝えるだけでなく、漁師の収入アップや漁業の担い手の増加につながればと、関係者は期待しています。

(柳川さん)「未利用魚も実はおいしい。価値が上がることによって、自分たちの漁業全体の利益につながる働き方ができると思う」

鹿児島でも広がりを見せる「サブスク」。利用者にとって便利なだけでなく、新たなビジネスチャンス創出や地域の課題解決につながる可能性も秘めていて、今後が注目されます。