看護師の離職防ぐには? 会議4割減、学生の夜勤支援…医療現場で始まった模索 鹿児島(2023年8月3日放送)
医療現場で今、課題となっているのが看護師の離職です。日本看護協会によりますと、全国の新卒採用の看護師の離職率はおととしは10.3%で、初めて10%を超えました。新型コロナの感染拡大による不安や業務の増加が原因とみられています。
こうした状況を変えようと、医療現場では模索が始まっています。
鹿児島県内最大、653床の病床を持つ鹿児島大学病院。看護師にとって、朝は1日で最も慌ただしい時間です。患者の状態や注意点を30分ほどの限られた時間で共有します。
3年目の看護師、古山京香さん(24)です。打ち合わせ中に何度もナースコールが。
(古山京香さん)「夜勤と日勤の入れ替わりの時間なので、すごくバタバタ。夜勤からちゃんと引き継がないとミスが出る。この時間が大事」
引き継ぎを終えて、病室へ。
「失礼します」「お薬を確認するのと、お熱、血圧を計りますね」
患者の小さな変化に気づくことも大切です。
(看護師)「かゆいです?」「いつからですか?」
(患者)「さっき、放射線の看護師さんが見つけてくれて」
(看護師)「特に新しい薬は始まってないですよね」
この日は、ペアの看護師と2人で病室を回り、およそ2時間で15人ほどの患者の健康状態を確認しました。
(古山京香さん)「朝のうちに病室を回るのが目標。患者の数が多いので、時間が勝負」
およそ700人の看護師が勤務する鹿児島大学病院でも、毎年1割ほどが結婚、出産、転職などを理由に退職しています。コロナ禍の3年間で退職者が大幅に増えることはなかったものの、去年は全体の1割の看護師が感染や濃厚接触などで出勤できなくなり、一部の病棟を閉鎖する事態となりました。
看護師として働く母親の姿を見て、同じ道を志した古山さん。コロナ禍の厳しい現場デビューでした。
(古山京香さん)「身体的にも精神的にも、いつ終わりが来るんだろうという思いしかなく、正直、きつかった」
患者の容体の急変や、手術の時間によっては残業もせざるを得ない医療現場。厳しさもある医療の現場で古山さんを支えているものが…。
(古山京香さん)「患者が西郷さんの巾着を作ってくれた。何気なく接していたが、私の名前も覚えてくれた。もっと患者一人ひとりに真摯に向き合いたいと思った」
厳しい現場を支えるため、大学病院では週2日から働けるよう対応し、会議の時間を従来から4割減らし、5月には看護師の悩みや相談に応じる窓口を設置しています。
さらに、医師や看護師などをめざす学生による夜勤のサポートも始めています。
(看護師)「学生さん、きょういるかな?と言ったりする。大切な存在」
(鹿大歯学部 学生)「感謝されることもあるので、励みになって、次もやろうという気持ちになる」
現場の看護師も、自分たちで職場の環境を変えようとしています。そのひとつが、仕事や生活で感じたことや悩みを語り合う場です。
(古山京香さん)「日々の業務の中で一人ひとりと時間を設けて向き合うことは困難だが、患者の些細な言動に注目し関わっていきたい」
(先輩看護師)「(患者と)距離を縮めるのは基本。私たちも気をつけていきたい」
(山口雪子看護師長)「黙食などで(職員同士が)コミュニケーションをとる機会が減っている。悩んでいること、つらかったことをみんなで共有したり承認したりする場を作るよう心がけている」
3年目に入った古山さんもどうすれば働きやすくなるのか、考え始めています。
(古山京香さん)「入ったばかりの頃は1人で働くのは怖いと思うし、私自身もそうだった。みんなで育つ意識を持って後輩と接したい」
看護師という仕事の責任とやりがい。つらいだけのイメージを変えようと、現場の模索が続いています。