給食でアイス提供 1日1校限定のワケ「陰の努力」1日に密着 鹿児島市(2023年7月19日放送)

学校給食で、子どもたちが楽しみにしていることの一つがデザートではないでしょうか。鹿児島市の小学校の一部では、夏にアイスが出されていますが、実は1日1校限定なんです。
なぜ1日に1校だけなのか、子どもたちの笑顔のために陰の努力を続ける社長の1日を追いました。


午前5時。積み込み作業は早朝から始まります。給食用の冷凍野菜や乾物などを卸している鹿児島市の東京物産。毎日冷凍車2台で、給食センターや学校など十数か所に食材を配達しています。

(中村社長)「これがアイスですね」

給食用のアイスは社長の中村満春さん(48)が配達の担当です。この日、小学校に届けるのはメロンシャーベット。全校児童は323人ですが、2つのケースには20個ほどしか入っていません。

(中村社長)「検食含めた職員室の分と、予備を3個ほど入れている」

給食に異常がないかを確認する「検食」。子どもたちが口にする前に、校長が検査のためにその日出されるメニューを食べて確認します。このアイスは「検食」用です。

食材の配達は通常、給食センターや学校に1度出向くだけですが、アイスだけは3回出向く必要があります。

1回目は検食用を他の食材とともに朝に配達。2回目は給食時間前。アイスが溶けないよう、発泡スチロールの容器で給食が始まる直前に持ち込みます。学校に大きな冷凍庫がないためです。最後に、発泡スチロールの容器を回収します。

このように手間がかかるため、5人の家族経営の中村さんの会社がアイスを配達するのは1日1校が限界です。

この日向かったのは大龍小学校です。ほかの食材とともに給食室の裏手から運び込みます。検食用のアイスをすぐに冷凍庫に入れます。

そして正午前。会社にいったん戻った中村さんが再び来ました。今度は給食室の表に車を横付けして、エンジンを付けたままにします。

(中村社長)「(冷凍庫は)マイナス14、15度だが、エンジンを切ると少しずつ温度が上がる。しっかりと冷やしたいので、かけたままにしている」

給食係の子どもたちが来ました。
(中村社長)「アイスです」
(子どもたち)「やったー」「ありがとう」

1年1組の教室です。給食を食べた子どもからアイスを受け取ります。
(子ども)「おいしい」「おいしい」

Q.学校でアイスを食べられるのは?
(子ども)「ラッキーって思う」

この日は30度を超える真夏日。

(担任)「朝からテンションが高くて喜んでいた。給食を楽しみに午前中は頑張りました。この時期、(暑くて)プールに入ったり、汗かくので有難い」

東京物産は、中村さんの祖父が1950年に創業。アイスの配達を始めたのは、父親でした。30年近く前、給食センターの栄養士から「アイスを給食に出せないか」と問い合わせを受けたのがきっかけです。

配る件数も多く初めは断わりましたが、アイスの問屋の力を借りて、合わせて5、6台の冷凍車で配達し始めました。しかし、手間もかかることから6、7年前から問屋の協力が難しくなりました。それでも1日1校だけならと継続を決めたのは、息子の中村さんでした。

(中村社長)「数あるデザートの一つでしかないが、給食に出れば喜んでもらえるし、実際きょうも子どもも取りに来て、メロンシャーベットだと分かったらすごく喜んでいたので、それだけ」

この日、3度目の来校です。ほかの食材と比べ、配達に手間はかかりますが、アイスの配達のときだけの喜びがあるといいます。

(中村社長)「普段、なかなか子どもと会わないので、反応をダイレクトに感じられるのは嬉しい」

この日の配達を終えると、早速次の日の配達の準備です。1学期は終業式の今月20日まで学校に「涼」を届ける予定です。