馬毛島基地着工から半年“工事作業員6000人”に不安の声も 元島民「なるようにしか…」 鹿児島・種子島(2023年7月12日放送)
鹿児島県西之表市の馬毛島で、自衛隊基地整備とアメリカ軍の訓練移転に向けた工事が始まってきょう12日で半年です。基地工事で変わっていく地元の姿を、種子島の住民や馬毛島の元島民はどう受け止めているのか?取材しました。
種子島から見た、12日の馬毛島です。関係者によりますと、島では今、仮設桟橋や作業員宿舎の整備などが進められていて、ところどころ、土がむき出しになった場所も見られます。
馬毛島では、自衛隊基地の整備と、アメリカ軍空母艦載機の陸上離着陸訓練の移転に向けて、今年1月から概ね4年の計画で工事が始まりました。
Q.滑走路をいつまでに完成させ、いつから米軍訓練(FCLP)を開始するのか?
(浜田防衛大臣)「(FCLPに)最低限必要な施設は先行して完成させる考え。確定的なお答えができる段階にはないことをご理解いただければ」
着工から半年、種子島では今…。
(記者)「午前7時の西之表港です。続々と漁船が集まり、けさも工事作業員を乗せた船が馬毛島に向かう様子が見られます」
漁船が続々と港を出ていく風景は、今や日常となっています。
人口およそ2万7000人の種子島。種子島には1000人、馬毛島に200人の工事作業員が滞在し、ピークの来年2月には、種子島では2000人、馬毛島では4000人のあわせて6000人に増える見込みです。
作業員の急増に伴って種子島のホテルやレンタカーはひっ迫し、賃貸住宅の家賃も上昇。さらに、暮らしへの影響も懸念されています。
西之表市の中心部近くの下西地区。朝のごみ回収を取材すると…。
(ごみ回収作業員)
「全体的にごみの量が増えた」
「ちょっと想像つかない。何千人と作業員が増えたらどうなるか」
生活ごみが増加する背景にあるのが、下西地区で進む工事作業員用の宿舎の建設です。
種子島清掃センターでは、ごみの焼却施設の稼働率は常に95%前後となっていて、「さらにごみが増えれば処理が追いつかなくなるおそれがある」といいます。
下西地区の校区長・西村俊夫さん。ごみの増加とともに懸念しているのが、作業員らの車の増加です。地域の幹線道路は朝と夕方を中心に混雑が目立つようになり、事故のリスクを心配しています。
(下西地区・校区長 西村俊夫さん)「児童クラブの生徒が、公民館へここを渡って行く。横断歩道をつけてほしいと言っている」「(解決は)難しい、現状の道路状況だと」
下西地区には今後、防衛省が買い取った市の土地に、自衛隊員の宿舎が整備されることになっています。西村さんは、人口増加や街の活性化に期待を寄せる一方で、地域の不安や懸念への対応が課題だと話します。
(下西地区・校区長 西村俊夫さん)「人が増えればいろんなトラブルも増える。そこで住民、行政と一緒になり問題点を解決する、そういう気持ちで受け入れる環境づくりが大事」
基地計画が進む中、西之表市は、基地を受け入れるかわりに国から支給される再編交付金の活用を進めています。今年度、西之表市には20億7200万円が交付され、社会基盤の整備や農林水産業などで47の事業を計画。小中学校ではすでに4月から学校給食の完全無償化が始まり、今後は老朽化した公園の改修や、バス・タクシーなど公共交通の無償化などを計画しています。
(西之表市民)
「(Q.給食費無償化をどう思う?)いいと思う。助かります」
「子育てにお金を出してくれてありがたい」
一方で、八板市長が「判断材料が揃っていない」などとして、基地計画への賛否を示していないことについては…。
(西之表市民)
「(賛否を)言うと大変なところもあるんだろう」
「はっきりしてほしい。反対の人もいるので、声を聞いてほしい」
かつて馬毛島で暮らしていた人は、この半年をどう捉えているのでしょうか?
西之表市でたばこ店を営む池浪美代さん(82)です。1970年代まで15年間、馬毛島でもたばこ店を経営し、漁師の夫とともに3人の子どもを育てました。
(池浪美代さん)「運動会の時は親も一緒に島民みんなで出て、弁当作って」
変わっていく馬毛島の姿に池浪さんは…。
(池浪美代さん)「自分たちが住んでいた島が変わっていくのは…もうなるようにしかならない」
着工から半年。住民は複雑な思いを抱えながら、基地へと変わるふるさとの姿を見つめています。