「海の安全を守りたい」県内初・女子高生ライフセーバー誕生なるか(2023年7月11日放送)

夏休みも間近、いよいよ本格的な海水浴シーズンが到来します。海水浴場やプールなどで遊泳客の安全を守るのがライフセーバーです。
女子高校生として、県内初のライフセーバーを目指す高校生の挑戦に密着しました。


海水浴場などで人命救助を担うライフセーバー。先月、屋久島でライフセーバーの認定試験が行われました。

受験者のひとり、伊集院高校1年の上村優季さんです。ライフセーバーは鹿児島県内で高校生から60代までおよそ50人。高校生はこれまで男子だけで、合格すれば、女子高校生としては県内で初めてのライフセーバーの誕生です。

(優季さん)「小さい頃から公園の代わりに、ずっと海で遊んでいた」

磯海水浴場のそばで生まれ育ち、小学3年生からは錦江湾横断遠泳に打ち込むなど、幼いころから海に親しんできた優季さん。転機となったのは、小学6年生の時に参加したライフセーバーの体験会です。

(優季さん)「海での安全を守る人がいるというのは、かっこよくて憧れた」

ライフセーバー認定試験、3日前。学校が終わると、すぐに水着に着替え海へ向かいます。指導役はライフセーバーで父親の宏明さんです。

優季さんはライフセーバーとして活動するため、日本ライフセービング協会の試験の合格を目指します。

試験を受ける前に救急救命や、水辺の安全に関する基礎知識についての資格が必要ですが、優季さんは中学生の間にすべて取得。残るは、救助の実技を含んだライフセーバー認定試験だけです。

(優季さん)「救助者の体を半分乗せてボードをひっくり返すが、その時にボードが返せなくて難しい」

救助の際、自分の体重を利用してボードを回転させ、溺れている人をボードの上に乗せますが、身長155センチの優季さんにとって、自分より体の大きな相手を乗せるのは困難です。

(父・宏明さん)「(優季さんは)体が小さいが、それは言っていられない。どんな人かなんて選べない。どんな人でも対応できるように」

ボードの使い方や、救助した人を安全に陸へ運ぶ方法などを繰り返し練習しました。

(優季さん)「もう講習が来ちゃうんだと、焦りや心配な気持ちもある」

迎えた、試験当日。屋久島の会場で筆記や実技、体力試験に臨みます。優季さんのほか、4人の男性が受験しました。

(優季さん)「ちょびっと緊張してる」

不安を感じていた救助の実技。80メートル先の沖合に浮かぶ女性のもとへ向かいます。スムーズにボードに乗せ、陸まで連れてくることが出来ました。

(要救助者役 嵯峨京子さん)「上手にできていたと思います」

続いて、体力試験。200メートル走ったあとに200メートルを泳ぎ、さらにもう200メートルを走るコースを、9分以内にクリアしなければなりません。体力を消耗し、泳ぎが乱れます。

(優季さん)「息が出来ないことにパニックになって、どんどん息が浅くなった」

残り3分で最後の200メートル走。海水を含んだウェットスーツは重さを増し、思うように足が進みません。

「優季ちゃん行け、ここまで!がんばれ、ラストだぞ」

同期からの声援を受け、最後の力を振り絞ります。

(優季さん)「みんなが応援してくれてうれしかった。もし本当に溺れた人だったら命が止まってしまうと思ったから、歩いてもいいから進もうと思った」

試験は無事、合格内定。今月中にも正式な合格が通知される予定です。

(優季さん)「大好きな海だからこそ、自分の手で安全を守っていける、かっこいいライフセーバーになりたい」

県内初の女子高生ライフセーバーとして、スタートラインに立った優季さん。海の笑顔を守る夏が始まります。

優季さんは、この夏から錦江湾横断遠泳や、かごしま国体のオープンウォータースイミング競技などで、ライフセーバーとして活動する予定です。