深さ1.5メートルの用水路から小学生の声…助けた女子高校生のとっさの判断(2023年7月10日放送)

深さおよそ1.5メートルの用水路から出られなくなっていた小学6年生の女の子を3人の女子高校生が救助し、消防から感謝状が贈られました。救助のポイントとなった判断とは?


南さつま市消防本部から感謝状が贈られたのは、加世田常潤高校2年の田頭雅さんら3人です。その理由は、先月の出来事にありました。

先月14日夕方、田頭さんが自転車で下校していると…。

(田頭雅さん)「泣きながら『助けてください』みたいな。空耳かと思い通り過ぎて、その先から引き返して来たら、用水路の中に(女の子が)いた」

国道沿いにある1.5メートルほどの深さの用水路の中にいたのは、制服姿の小学6年生の女の子。その時の天気はくもりでしたが、昼間に降った雨の影響で水が深さ40センチほどまで増え、女の子は膝の上くらいまで浸かっていました。

(田頭雅さん)「私が女の子に『登れる?』と聞くと『すべる、とげがあって上がれない』と言った」

水の流れも早く、一人での救助は難しいと判断した田頭さん。同じクラスの重信茉依さんと大坪星莉さんに携帯電話で助けを求めました。2人はスクールバスで下校中でした。

(重信茉依さん)「『子どもがおぼれている』みたいなことを言われ、すぐにバス運転手に『すぐそこで降ろしてもらえませんか』と声をかけ、走って来た」

田頭さんは合流した友人2人に見守ってもらいながら用水路に入りました。

(田頭雅さん)「こういう感じで(女の子の足を)持ち上げたら、上から友人2人が手を伸ばして、女の子の手をつかんで引っ張ってくれた」

女の子は、用水路におよそ15分間取り残されていましたが、3人によって無事に救助されました。下校中に落としてしまった水筒を拾おうと用水路に入ったものの、自力で上がれなくなっていたといいます。

(重信茉依さん)「『助かってよかったね』と、ずっと隣にいて背中をさすってあげたり、少しでも不安をやわらげることができたらいいなと」

危険を顧みずに1人で行動するのではなく、友人を呼んでから救助にあたるという冷静な判断が救助の成功につながりました。

(加世田常潤高校 松木みどり教頭)「1人でできないことを友達と協力して、それが実を結んで救出できたのは本当に良かった」

(南さつま市消防本部 鎌田明隆消防長)「友だちを呼んだのが素晴らしい行動だった。多くの人を呼んで消防に連絡することが二次災害の防止にもつながる」

田頭さんの背中を押したのは、小さい頃から聞いていた親の教えだったと言います。

(田頭雅さん)「親には『困っている人がいたら助けなさい』と教えられた。現場で女の子を見たら、そのまま帰れない。友だちを呼んで助かってよかった。これからも困っている人がいたら迷わず助けたい」

取材を進めると、救助された女の子の父親は加世田常潤高校の卒業生だったと判明。父親は「母校の生徒が娘を助けてくれて誇りに思い、心から感謝している」とコメントしています。