種子島でトコブシ漁解禁 馬毛島計画で変わる漁師の風景 鹿児島(2023年5月26日放送)
種子島では今月から、特産のトコブシ漁が地区ごとに順次解禁されています。馬毛島基地の建設が始まってから初めてとなるトコブシ漁。ある漁師の思いを聞きました。
種子島の海。素潜りで、探しているのは・・・アワビの仲間、トコブシです。種子島の特産でナガラメとも呼ばれています。
西之表市住吉地区。この日、1年ぶりにトコブシ漁が解禁されました。
(漁師)「この人が住吉地区のナガラメ水揚げナンバーワンだから!」
漁師歴15年の上妻雄さん(39)。トコブシ漁では住吉地区でトップクラスの漁獲量を誇ります。
(上妻さん)「自分はクシを使う方法が人より長けていると思う。他の人よりとれるという自負がある」
上妻さんは元々農家でしたが、20代で漁師にシフトしました。
(上妻さん)
「(漁師になったのは)好きだったから。泳いでナガラメとるとか、楽しかった。がんばっただけお金になる」
「(Q.今日の漁はどうですか?)量としては少ないですね。今で1.5キロくらい。今からもう少し泳いで、全体で5キロくらいになれば。だめですよ、これでは。」
種子島でとれるトコブシは、ピーク時の1980年代には80トンありましたが、おととしは1トンほど。エサとなる海藻の減少などが要因と言われています。そんな中、主要な漁場となったのが12キロ離れた馬毛島。特に東側の横瀬と呼ばれる周辺です。
しかし、馬毛島基地の建設にともない種子島漁協は今年2月、漁業補償と引き換えに横瀬周辺の漁業権を放棄しました。6月1日に馬毛島での漁も解禁されますが、今年から島の東側に入ることはできません。
今、漁師の多くが基地の建設作業員を送迎したり、警戒船の仕事を受けたりしています。基地受け入れを容認する一方で、漁場を失う漁師の心は複雑です。
(漁師 浜尾実さん)「4年後、5年後、馬毛島基地が完成して(海上タクシーなどの)仕事がなくなって、さあ漁をしましょうとなった時、何をしたらいいのかすごく不安」
上妻さんも漁に出る日を減らし、確実に収入を得られる海上タクシーを運航するようになりました。
(上妻さん)「馬毛島のトコブシ漁の9割は東側でとれる。その漁獲がなくなるので、シフトチェンジするために船を大きくしたんです。借金して船を大きくして、違う漁を今から見つけないといけない。今までは家族4人が馬毛島でどうにか細々とでもご飯は食べられたんですけど。しょうがない」
(上妻さん)「馬毛島をあてにしない他の漁業にシフトチェンジするために、馬毛島の仕事とか海上タクシーなどをしている。漁をあきらめたくはないですよね」