新型コロナ 鹿児島県喜界町の1歳児 県内初の「偽陽性」どうして?

鹿児島県喜界町では、今月5日に1歳の男の子が新型コロナに“感染”したと発表されましたが、その後、実は感染していないにも関わらず、検査で「陽性」となる県内で初めての「偽陽性」のケースだったことが分かりました。どうしてこのようなことが起きたのか取材しました。

(鹿児島大学病院 川村英樹特例准教授)「今回、抗原検査の特性上、間違った陽性や偽陽性が出ることはありうると思っていた」

県によりますと、喜界町の1歳の男の子は、今月5日、抗原検査で陽性となり、感染者として発表されました。しかしその後、2度行われたPCR検査の結果は陰性。また、同居する4人の家族も全員陰性だったことから、診察した医師は、感染していないのに陽性となる「偽陽性」と判断し、今月7日に感染の届出を取り下げました。届出取り下げは県内では初めてです。

この時、最初に行われたのは「抗原検査」でした。「抗原検査」は、採取した検体に免疫反応を引き起こす物質「抗原」があるか調べることで感染の有無を判断する検査で、特別な分析機器を使わずともキットさえあれば手軽に検査でき、30分ほどで結果が分かる迅速性が特徴です。

(鹿児島大学病院 川村特例准教授)「簡単なキットもあるので、どこの医療機関でも検査キットがあればできるし、検査結果が速くわかるのが特徴。非常に使いやすい検査法の一つと認識いただければ」

これに対してPCR検査は、検体にウイルスの遺伝子が含まれているかを調べるもので、抗原検査と比べて感度が高い一方、検査時間が1時間から5時間と長く、専用の機器や習熟した人材が必要、コストが高いなどの課題があります。

(鹿児島大学病院 川村特例准教授)「どこの医療機関もできる検査ではないのはデメリット(短所)としてある。検査の拾い上げる感度はPCR検査の方が優れているので、検査のゴールドスタンダード(標準基準)の検査と考えていただければいい」

そして、今回のような「偽陽性」はどうしても避けらないと話します。

(鹿児島大学病院 川村特例准教授)「抗原検査の特徴として、タンパクを検出する検査の原理だが、ほかのたんぱく質など別のものを拾い上げてしまって陽性になる偽陽性が、どうしても数パーセントぐらい起こりうることは、検査の開発の過程でわかっている。ある程度予測できることなので、そういったことを認識しながら検査を使っていく必要がある」

ただ、全ての離島にPCR検査の機器や検査技師を置くのは現実的でないとして、それぞれの検査の特性を理解し、組み合わせながら活用していくことが大切になると話します。

(鹿児島大学病院 川村特例准教授)「PCR検査はどこでもできる検査ではない。実際に機械も必要だし、ちゃんとした検査結果を出せるためには、それに熟練した検査技師がいないとできない。各離島にそういう機械を置いてというのは、あまりにも現実的でない。
どうしても検査が速くできる検査は抗原検査なので、抗原検査を先に使って、それでも疑わしい時や、陰性でも確認しなければいけない時はPCR検査を使うという今のやり方が現実的ではないかと思う」